「枕草子」の原本を読んだのはもう何十年も昔のことだったし、現代語訳も橋本治の「桃尻語訳」を途中で投げ出してしまいました。もう二度と「枕草子」には縁がないだろうと思ってましたところ、この本に出合いました。
何気なく読み始めたら驚きの連続。歴史と文学とは別の世界と思っていましたが、考えてみれば書かれた時代や背景が作品に大きく影響しているのは当然のことだし、それを知らなければ作品の面白さも半減ということを実感しました。
清少納言は登場人物の固有名詞を明記せず、「内大臣」とだけしか書いていません。それが誰であるか?本書の初めの数ページで、歴史的検証の結果、いままで言われてきた人物ではなく別人であることを指摘します。まるで、推理小説の謎解きのようです。
古典も歴史も苦手な私でも、「へえ!」と驚きながら、どんどん読み進んでいきました。
「枕草子」のエピソードを読み解きながら、清少納言の時代が単なる過去ではなく、いまの時代と同じような人の生きているリ
アリティのある社会であること、そういうなかで「枕草子」が書かれて、今に伝わっていることの素晴らしさを本書は教えてくれました。