仕事上の興味があって手に取った。
著者はアッカ・ネットワークスの創業者。2000年の
起業から、ブロードバンド普及の波に乗った業容の拡大期、その後のフレッツの普及とDSL事業の停滞と新たなモバイル事業への参入失敗、そして2009年にイー・モバイルに吸収合併されるまでの顛末を描いている。
この2000年からの10年は、日本の通信業界にとってまさに激動の時期であり、たいへんな勢いでブロードバンド化、価格破壊、業界再編が起こった。そのあたりの事情は最後のほうで少しだけ触れられているが、全体のトーンは、ベンチャー企業の創業者としての述懐で、通信業界そのものに焦点を当てたものではない。
ソフトバンクの孫正義氏がボーダフォンを買収したとき、2兆円とも言われた負債の大きさにみな懐疑のまなざしを送ったが、本書をみると、その決断こそがADSLからモバイルへの事業転換を図った、孫正義氏の見事な経営判断だったということができそうだ。逆にモバイルへの事業転換ができなかったアッカは会社がなくなってしまった。
通信業界の動向という観点ではあまりお勧めはしないが、率直な書きっぷりで一ベンチャー創業者の揺れる胸の内はよく伝わってくる。
起業を目指す若い方には面白いと思う。