色川さんの小説の主人公はたびたび幻覚の類に襲われる。 この「狂人日記」もそうである。とびきり悲しい幻覚だ。 心がくちゃくちゃになっちゃって、現実生活に復帰するなんてもはや絶望に近い状況なのに、それでも奮闘する主人公が、とてもけなげで、そしてせつない。同時に、すこしおかしくもある。そういう風に書いているのだと思う。 こういうことを書いていた。「苦しむのは書く方だけで十分だよ。読者は楽しませなければいけないんだ」これは阿佐田哲也としての発言だけれど、これは色川武大の一連の著作にも敷衍できるのではないだろうか。 やさしい人だったんだろうな、と思う。
こういう泥臭い人間味に満ちた映画は好きです。 キャストのその表現が上手でした。
この本に溢れているのは<愛>だと思う。人生に対する愛、そしてなにより読者である若い年代の人たちへの慈愛とも言ってよい姿勢に、しみじみとした感動を覚える。
麻雀を少しでもかじったことのある人なら誰でも知っていることだが、麻雀において「勝ち続ける」ということはあり得ない。どうしてもいい牌がまわってもない時もあれば、あえておりる(負ける)選択をしたほうがよい場合もある。
人生だって同じだよ、優等生の勝ち続ける人生ってのは本当は異常なんだよ、あり得ないことなんだ、禍福はあざなえる縄のごとし、大切なのは「負け」も認めながら、時にはいろいろなことを「しのぎ」ながら、それでも、最終的にはプラスマイナスでプラスに転ずるように世を渡っていく知恵をつかむことなんだよ、というようなメッセージが、少し照れのはいった優しい口調で語ってくれる。
この本を読むたびに、色川のおじさんがそばにいるような気にさせてくれる。学生にもサラリーマンにも、必携の一冊だと思う。
私の座右の書。
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