ライブビデオにありがちな早いカット割は一切なく、客席もほとんど写らない。まるでステージ脇でライブを眺めてる
スタッフになった気分で四人に集中して演奏を楽しめるという面白い体験ができる作品。手がけたのはWarp Films.
世界各国各所で大絶賛されているので聞いてみたが、1周目では魅力があまり分からず。
しかし3週目ぐらいで"どういう事やりたい作品なのか"形が分かってきて好きになってきた。
これは「歌詞のアルバム」で、方法論的にはヒップホップっぽい作品だと思う。
このバンドは1stから歌詞で鳴らしてきたところがありR&Bからの影響も受けているしでその辺は今更なのだが、この作品は今まで以上にその色が濃い。
基本的に詞を聴かせるために音が紡がれていき、その中で一部
バラード除いてVoアレックスはあんまり"歌って"ないし、音全体からくる"白人がやるブラック"臭がすごい。
音像はあまりキャッチーではなく、テンポが緩い上にルートが変わらず淡々とヴァースが続く…みたいな曲が多いので退屈に感じる曲も一部あるが、
逆に言うとサバスとパールジャムがhiphopのトラックを演ってるような感じで、歌詞との相乗でサビでもないのに演奏がどんどん熱を帯びる展開が目新しい(2曲目など典型)。
なので、歌詞を理解して楽しもうとする気がないタイプのリスナー(悪い意味ではなく)にはあまり合わない作品かもしれない。
そしてアレンジの練られ具合が半端じゃなく裏のコーラスのパンの仕方とか、イントロのオカズリフ一つにしても作り込んでるなと感じる。
こういう曲作りのアルバムは他のバンドは作ろうとしないし、アレックスのように詩を書ける人間も少ないので、かなり唯一無二の境地に来た感。
「スコット・ウォーカーの影響を受けたパールジャムがhiphopアルバムを作ってる」みたいな、もうUKロックというくくりで扱ったら失礼なバンドだわと思う。
ビートと言葉の反復で聞かせるアルバムは大抵一辺倒で飽きやすいのだが、中盤(5)No.1 Party Anthemからの
清涼剤パートもある(どちらかというと後半がメロディアスなので、(5)〜(12)のみ聞いてみると新たな一面が発見できるかも)のでこれは結構すんなりリピートできた。
このバンドは今までは1stのWhen the Sun Goes Downのようなパンキッシュながらちょっとリズムが面白い速攻な曲が筆頭だったと思うが、これからは(1)のようなどす黒い腰を据えたロックが代名詞になっていくのだろうか。