auのコンテンツだったので「知る人ぞ知る」作品だった
『ロス:タイム:ライフ』の続編が、このDVDリリースで
グッと見やすくなったのには、単純に嬉しい。
『ロス:タイム:ライフ』はもともと、筧昌也という監督の
プライベートフィルムに端を発し、持ち味が強く出た作品である。
そういう意味で言えば、氏が脚本、コンテ、演出を全てこなした
この続編は、他脚本家や演出家が多く入っているTVドラマ版以上に緻密だ。
監督の持ち味も作家性も遺憾なく発揮されている。
残念ながら筧氏は、今はまだ長編監督の機会にあまり恵まれていないので、
そちらの評価はまだしかねるが、こと商業短編作品の作り手とすれば、
間違いなく、今の日本の若手で随一の腕前を持っている。
その早撮りと
タイトなスケジューリングは、メイキングパートからも伝わるが、
だからと言って中身まで安価な作品だろうと侮るなかれ。
谷村美月、武田真治のキャラを存分に引き出した、非常に愉快な作品になった。
完成度、TVドラマ版以上。気軽に楽しく見て頂きたい。
ガチでこれは『ロス:タイム:ライフ』シリーズ中の最高傑作。
シリーズをずっと追いかけて観てきたが、まさかの展開に、思わず感涙。
大体の連作ドラマというものは、作ればつくるほどパワーダウンしていくものだが、
回を重ねるごとに高くなる(特にTV版以降が、イイ!)完成度には、参る。
TV版第一話の
瑛太も、最終話の
大泉洋も越えた、こども店長の演技力に驚愕。
脇役のキャスティングやコネタのディティールも、凝りに凝っていて、
画面の隅々まで眺める楽しさもある。「神は細部に宿る」この手抜きの無さ!
ぶっちゃけ、20分強ではもったいない。尺が1時間でもいいぐらいだ。
しかも、ワールドカップイヤーのうちに観れば、なお愉快な気分になる仕掛けも。
……ただ、値段が高いのだけは、本当に勿体無い。
これはメーカーの猛省を促したいところ。
何を考えてこの価格設定をしたのか、全く理解に苦しむ。
何から何まで意図が見え見えで、1ミリたりとも心を動かされなくなったテレビドラマの世界を根本的に変えたかもしれない画期的なシリーズが「ロス:タイム:ライフ」だ。多くの伝説的なドラマがオンエア中よりもむしろその後でジワジワとウォッチャーの心を侵食していくように、本作品もこれからの歴史(あくまでテレビドラマの将来があれば、の話だが)がその偉業を証明していくだろう。
このテレビ版のパイロット版ともいうべきショートをかつて筧昌也監督(ドラマシリーズの原案、ディレクター)は2作品製作しており、それらは彼自身のサッカー好きという嗜好性を超えて、愛国心を失ったといわれて久しい日本人がなぜかスポーツの祭典の時だけ必ずコブシを振り上げ、かつ声を張り上げて応援してしまうあの空気感、そしてそれを会場ではなくテレビ画面というフィルターを通して享受するときに目撃する“実況=特殊な演出スタイル”からドラマ性を抽出したところにこそ、ひとつの映像革命が秘められていた。ドラマ版でもその勢いはとどまるところを知らない。
果たして「人間ドラマ」を「サッカーの試合」と比したときに、そこにアドバンテージは得られるのだろうか。フィクションがその力を思い切り失っている時代に、筧昌也は今一度フィクションの力に賭けてみようとしている。それもわかりやすいほどの単純明快なドラマを、あえて違った次元の光源でもって照射することによって。
お勧めは「カメラマン編」「幼なじみ編」「部長編」「ひきこもり編」。担当演出家によってアプローチの違いはあるが、この2本のクオリティは出色だった。これまでのテレビドラマの感触を越える繊細さと、ロスタイムに降り立つべき神様による、アッと言うような魔法に満ちていた。