深まる恐ろしい事件、今の日本を包む学生、教育者、家族の問題、同時に世界のどこかの国における人々の苦しみの存在が大きな川のうねりのように読み進むうちに遭遇していく感覚があった。 他者との人間らしい関わりには各個人、お互いの精神のバランスによって成り立つと年齢を重ねるごとに学んで来た。が、家族や教育者、小さき者がさらされる社会のあつれき、病理的心理を抱えた大人たちの存在はどこに救いを求めたらいいのか、とこの2巻の行く末を祈るごとくの気持ちで読んだ。 登場人物たちの悩み、苦しみが報われる日々を祈りつつ3巻を早く読みたい。
人を縛りつける鎖でもあり、優しく包みこむ繭でもある家族。 家族の間に究極の愛は存在するのか。 それを求めることが人として生きる最終目的なのか。 全ての問いの答えは血と慟哭に昏く染まる家の中に……。 冒頭からの凄惨な暴力の描写は同著者の『孤独の歌声』を思い出させる。『永遠の仔』しか読んでいないと、あまりの明度の違いに驚かされるので注意。 ミステリーとしてはあまりに早く犯人がわかってしまう分、長々と続く中盤が少々辛い。犯人とのニアミスも多すぎるのでは。しかし、後半の盛り上がりはかなり凄くて、多くは語れないが、手に汗握ると言っても言い過ぎではないはずだ。 エピローグは爽やかだ。少し綺麗にまとめ過ぎのきらいもあるが、救いがある。しかし、裏エピローグとも言えるあの会話があるから素晴らしいのだ。ページ数は多いが、ぜひ御一読のほどを。 読んでいる間、ストーリーの概要だけ知っている名作ゲーム(らしい)『家族計画』の匂いを感じ取ったのだが、その辺りはどうなんでしょうか。
本作品は、95年11月に発刊され山本周五郎賞を受賞した「家族狩り」の文庫化にあたり、作者が全面的に書き下ろした新作である(家族狩りの文章を1行も使っていない!)。本作の第1部を皮切りに、全5作が毎月発刊される。 残虐な方法で夫婦が殺害され、その子供が自殺体で発見されるという事件が相次いでおこる。子供たちは事件前から家庭内暴力を起こしておりその果てに起きた事件として処理されるが、事件現場に立ち会った警部補・馬見原は、その結論に疑問を抱く・・・。一方、作品に登場する主要な登場人物それぞれが「家庭・家族」にトラブル・トラウマを持っており、第1部では主に馬見原の事情が描かれる。 「家族の崩壊」と「そのしわ寄せに苦しむ弱者・子供」という本作品のテーマは、99年の大ベストセラー「永遠の仔」に通じるテーマである。「家族狩り」が発刊された95年当時と比べて家族を取り巻く状況は悪化し、様々な事件が現実に多発している。これらの社会情勢の変化にあわせ、作者がどの様なメッセージを私達に与えてくれるのだろうか? いずれにせよ、発刊を待ち焦がれただけあり、一気に読了させてもらった。期待に違わぬ出来で、ミステリーファンならずとも絶対買いである。一方、第2部まで1ヶ月も待たなくてはならないというのは拷問に等しい。あなたは毎月読みますか?それともまとめて読みますか? 本シリーズは2004年の出版界最大のニュースとなるであろう。
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