私は赤塚漫画をリアルタイムで読んでいた世代ではないが、
このCDは冒頭から最後まで楽しく聴くことができた。
つまりは「赤塚不二夫そのもの」を、
それぞれの演者が音楽表現した結果が今作なのだと思う。
歌唱の上手下手や演奏スタイルは考えてはいけない。
いま一度「
天才バカボン」を一通り読みなおすといい。
赤塚不二夫自身が追い求めたであろう「非常識の軌跡」。
あれを音楽表現しようとは、甚だ天晴なバカさではないか。
真面目が取り柄の人が買うことには、賛成の反対なのだ。
バカ田大学の優等生だけが楽しめるのだ。これでいいのだ。
手塚治虫の全集DVDもすばらしいものでしたが、このDVD集も負けず劣らず良い出来です。20世紀日本における漫画文化のレベルの高さを余すところ無く伝えてくれる逸品だと思います。付録のDVDでは動く不二夫先生がたっぷり見られますが、キテレツなコスプレ映像を家庭用ビデオで撮影させているところなどギャグ漫画そのもののようで大爆笑間違いなし!
限定発売なので、無くなってしまう前にぜひ買いましょう。安い買い物と思いますよ。
NHK朝ドラ・ゲゲゲの女房からの話題書「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」を読み、赤塚不二夫の自筆の書、ということで
読んでみましたが、内容に驚きました。
“レレレの娘”こと赤塚りえ子さんの、家庭内ドタバタギャグから、さぞかし愉快な家庭物語と思いきや、逆に、満州・旧ソ連国境
近くで憲兵(警察官)の長男として生まれ、当時で言うところの「匪賊討伐」にあたった父君に徹底した人間教育、曲がったことは
しない。人を信じて裏切られても『これでいいのだ』、そして、銃弾飛び交う隣接拠点の襲撃に同行させられたこと。また、斬首
された首を見物したことなど。一見、ハチャメチャと思われがちな筆者の生活の影に、生い立ちからの闇が潜んでいることを実感
させられます。
赤塚ギャグは、スラップッスティックとも言われるように、ある意味シュールで血をみることも多いのですが、何故か母親だけは
その対象にならない、という理由も、自ら述べられているように、ご母堂に愛され続けた筆者ならではのこと。また、凄惨な引揚げ
を乗り越えて帰国した直後に亡くなった妹の影は、デコッパチの妹に擬せられます。やりたい放題に放埒に生きたように見える筆者
が、実は、漫画家としてデビューする、かの有名な「トキワ荘」のエピソードの前までに重点が置かれていて、そこから先はサラリ
とご両親の亡くなるまでを淡々と描いている。爆笑ギャグの根源には、シニカルな視線があって、その裏面を常に漫画家していたと
いうのが感じられます。
同じく満州の官吏の子息から引揚げ体験を持ち、ジフテリアの妹を背負って街じゅうを歩いたという、大藪春彦氏のエピソードとも
繋がります。それを、徹底した体制不信という方向でストレートに燃焼させたのが大藪春彦氏、シニカルに笑いに転換させたのが
赤塚不二夫。本書を読むと、「これでいいのだ」というフレーズに潜む筆者の“突き抜けた”想いがひしひしと感じられます。
ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)