直近にアニメサントラとして
バンパイヤ騎士や
西洋骨董洋菓子店 〜アンティーク〜、ROOKIES、NHKスペシャル 病の起源 といった、引き出しの多い羽毛田さんらしく作品世界に寄り添ってフィットした楽曲を作っていたりします。それらは、メインとなる旋律は思いの外聞こえてこなくて、そつのないサウンドトラックという感じが強かったりします。それは、たぶんCDでまとめて聴いてみると、テーマ性に書いた雰囲気を感じてしまうというものになるのではないか、と思えたりします。
その点から前作である
魔法遣いに大切なこと は、作品のコンセプトから受けた印象を元にしつつ、かなり自由に自らの楽曲として作ったという印象が強かったですし、それが作品にもいい影響を与えたと思えるものになっていたりします。その点は、今回の〜夏のソラ〜でもアイルランド系のものという一つの柱ではいかんなく発揮されています。ただし、メインテーマとなる旋律とそのアレンジが多くを占めており、楽曲としてのバリエーションの多さにつながっていないのは、前作を気に入っていた人にとっては不満が多少残るものになっていると思います。
もう一つの柱であるロックなものというのは、直近ストリングスの大きな編成やオーケストラ系のきれいな感じとは対極を成すものですが、実はこれも羽毛田さんの得意分野といえるものだったりします。いわゆるアメリカン・ロックといったものは、それほど旋律にキャッチィなものはないのですが、この〜夏のソラ〜では、作品の映像表現にもぴったりと合っていたりします。しかし、作品にあっているものは、作品自体の評価も良くないと楽曲としてあまり評価されないという前例通り、あまり評判は芳しくないかもしれません。
アイルランド系のものとロックなもの。このちょっと合わさらない2つのコンセプトの楽曲が、一つのサントラとしてきちんと並び立って響いているというのは、個人的には気に入っていたりするのでした。
シナリオ的にはよくあるハートフルストーリーという感じで特に目新しさはなく、むしろ荒削りな点なども目立ちます(第1~2話で、主人公のユメが大量の紙幣を魔法で作り出したのに大したお咎めもないのを見て「おいおい、そりゃ重犯罪やろー。なんでそれで済むねん」と思わず突っ込んでしまいました(笑)。魔法使いが行政機関だというなら、法的な考証などもしっかりやってほしかった…)。しかし、決して悪いシナリオというわけではなく、たしかに心温まるお話ですし、何より、非常にクオリティの高い丁寧な作画で「あたりまえの日常」をしっかりと描いており、作品としてはすばらしい出来になっていると思います。声優さんもあえて「アニメ声」でない方々を選んでいるような感じで、特に主人公のユメ役は、声優初挑戦とは思えない演技とアニメのヒロインっぽくないハスキーな「普通の声」で、この「日常的な」作品のヒロインにはまさにハマリ役といった感じです。もともと実写向けのシナリオだったらしく、あえてアニメでやる意味があるかどうかは疑問ではありますが、戦いも暴力もない、ほっと一息つけるような心温まるアニメが観たい方には、一押しの作品です。
先日借りてきたDVDの予告に収録されていたのをみて、面白そうだと思い観てみた。
そんな感じで観た場合、期待値が高くなっているせいかあまり面白く感じないことが多い。
だが、本作はそんなことはなく、面白く、大切なことを感じさせられる内容だったと思う。
鑑賞後に一番感じたのは、「
魔法遣いに大切なこと」というのは、何も魔法遣いだけではなく、全ての人に当てはまることだと思った。
依頼に対して誠実であること、柔軟に対応することの難しさ、できる範囲で精いっぱいのことをする、など魔法を遣うことができない人にも大切なことを登場人物たちの言葉・行動から教えてもらった気がする。
近所の売れ線の映画しかやってなかった映画館でやっていなかったので、たぶん全国何百
スクリーンなんていうレベルではなかったんだと思う。
だから、観ない人も多いと思う。
そんな人には是非見てほしい。
そして感じてほしい、魔法が使えなくても大切なことを教えてくれるということに。