【茶料理】は素晴らしいです。 学生時代に恋心を抱き合っていた久子と依田。 二人は結ばれる事なく、それぞれ別の家庭を築きます。 依田の洋行を新聞で知った久子からの連絡で二人は再会するのですが・・・ 結末は本当に心震えます。 芥川龍之介の【秋】に似た、本当にグッとくる恋の話です。 若き日の久子の若さゆえの恋の稚拙さ、その心理描写。 成熟した後も引き摺るその純粋さ。 まさにこれこそが文学だと思わずにはいられない。 他に収録されている短編ももちろん素晴らしいです。 私は古風な恋の物語が好きなので、本作品を主にレビュー させていただきました。
特に第7曲目「母の歌」(野上弥生子―作詞、下総皖一ー作曲)は日本歌曲としても通用する優れた歌ですがCD音源が殆んどありません。ソプラノ抒情歌御三家、関定子、藍川由美、鮫島由美子は歌っていませんし、由紀さおり、倍賞千恵子、芹洋子なども吹き込み無し。(橋本国彦作曲のものはかなり在りますが)。当方の知る限りこの歌のCDは桑名貞子、松田トシぐらいで(GO-RILLAは1番だけ歌唱、最近BS日テレでFORESTAが歌っていました)この川口京子さんのCDはとても貴重です。(2番の歌詞にたった一句だけ戦時用語が入っている為歌われないのかな)
読み進むにつれて、ひきこまれる作品であり、面白くなる。情熱を感じてきて読んでて熱くなるのは私だけか? 100歳に近野上弥生子が、なにか青春時代の女学生に戻り書いているようだ。 久しぶりの小説を読んだという気持ちだ。
秀吉が利休に切腹を命じるまでの数年の二人と周囲の人々を描く。
農民から天下人となった秀吉。堺の商人から茶道の大家だけでなく政治的な要人ともなった利休。二人は絶大な地位と引き換えにある種の自由を失った。危うい二人のバランスは周囲の人間や時勢の変化によってその均衡を失っていく。 自由であることと格式あることをどうバランスを取るかというテーマは、茶道のような芸術においてもそうであり、二人の関係に茶の湯の道と人生を重ねているのだと感じた。架空の息子、紀三郎が父、利休とどう向き合っていくかもこのテーマに絡めているのだからすごい。
歴史好き、特に歴史上の人物好きにはたまらない。「花の慶次」読者にもお勧め。
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