コミックスを実写にするのは難しい。とくにコミカルな作品ほど表現に自由度の高いアニメに比して実写映像の限界を如実に感じさせられるのだが、
のだめカンタービレはその難しさを見事に克服していて楽しめる作品だ。のだめ役の
上野樹里と千秋真一役の
玉木宏の二人が奇を衒うことなくキャラクターに入れ込んでいることに好感が持てる。この二人の熱演あってこその喜劇とも言えるだろう。この二人以外にも有名タレント、怪タレントの出演が目立ちながらも、まずタレントありきになることなく、各人各様の存在感を保ちながらアニメストーリー独特のありそうでなさそうな微妙な現実感とともに観客の心をチョコチョコっとくすぐる感覚が楽しい。一方、タレントと無関係な楽団員の世界では気難しいコンマスの内に秘めた思い、演奏家であるとともにまず食っていかねばならない、彼等を取り巻く複雑な環境といったエピソードがバランスよく配されていて締めと緩めのバランスがうまい。これに音楽の楽しみも加わって、意外と言っては失礼だが厚みを感ずる作品になった。さてストーリー的には前編はのだめのフラストレーションが蓄積するお話。続く後編が楽しみだ。
美青年で才能があるけれど、人に知られない弱みや陰があるスーパーヒーローと、ドジで憎めなくて、ちょっと変わったヒロインが出会い、接近したりすれ違ったり、横やりが入ったりを繰り返しながら、人間的にも、演奏家としても、そして恋も育って行く。少女マンガの王道を行く作品。少女マンガ独特の人物の描き方になじむまでちょっと時間がかかるけれど、一冊読み切るころには違和感が無くなる。
ともすれば、ありがちなストーリーになりがちだが、本屋に13巻(2006年1月現在)平積みさせる力は立派。この本のおかげで、少女漫画世代がクラッシックに興味を持つようになったことを見ても影響力の大きさがわかる。わが家でも、
ベートーベンやバッハのCDがよくかかるようになったし、NHK教育TVのクラッシック番組を娘たちと観ることもできるようになった。この功績を讃えて★5つ献上。
『スウィングガールズ』で
ジャズが、『のだめ』でクラッシックが若い世代に受けるようになった。おじさんには喜ばしい最近の動きだ。
「のだめ」の
英語版です。
翻訳されたコミックによくあるように、日本語版と左右反転していたらどうしよう、「びよらは右、弓は左」になっていたらどうしよう、と心配していましたが、杞憂でした。日本語版と同じ本の開きです。
さすがにのだめ語は訳出しきれてませんが、
英語でも十分腹を抱えて笑えました。あ、それは日本語版のセリフを覚えているからか(^^;、と思って「のだめ」を知らない知人に読ませたところ、真剣に笑っていたので、
英語版でも十分楽しめる内容だと思います。
いくつか誤訳はありますが、全体的にしっかりとした丁寧な翻訳です。のだめのセリフはもっとルーズでもよかったかな。
英語版でも面白いことが証明されたので☆5つ。