『One Piece』については、かなり前から周囲でも話題のマンガでした。しかし、ただでさえマンガにあまり興味のなかった者としては、やさしいジグソーパズルみたいな
タイトルのマンガに、子供向けの印象がぬぐえず、申し訳ありませんが、どうしても食指がのびませんでした。
しかし、もうすでに60巻以上の単行本が売れ続け、同僚にはまとめ買いする者も現れるに至っては、その幅広い年齢層からの支持の原因がしりたくなってきました。
とはいえ、60巻のまとめ買いはリスクが高く、さりとてどの巻を買えばいいのかと迷っているところへ、この本の存在を知りました。「STRONG WORD」という『One Piece』の人生激励用語集とでもいえばいいでしょうか。正直言っておどろきました。
登場人物のセリフだけでなく、そのセリフの背景や、実際の場面もマンガから抜粋されており、マンガをすでに読んだ人も、まだ読んでいない人も十分に文脈を味わうことができます。
巻末には、思想家にして武道家の内田樹氏の「目からウロコ」の卓抜な解説・分析がさらに言葉のちからを際だたせています。
個人的には「望むもの一人で手に入れて何が楽しいの。ほんとは…やりたい事も欲しい物も…たくさんあるけど……このままあいつらを捨ててあんたと一緒に行くくらいなら!!!わたしもう!!!何もいらない!!!」がお気に入りの「STRONG WORD」です。
内田氏の解説も出色です。「ルフィや白ひげや赤髪のシャンクスのような『純粋海賊』を特徴付けているのは、仲間同士の信頼と相互依存関係に最大の価値をおいていること」や、海賊たちは「自立していることによってではなく、『あなたなしでは生きてゆけない』という仲間への依存によって、……爆発的にその能力を開花させている」がいいですね。
勝ち負けや利益至上主義へのアンチテーゼとして、読者の心をつかんでいるからかもしれないと思いました。