![]() 物語 バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア (中公新書) |
学問の関心領域と言うのは、同じ時代、同じ地域に関心を持っても違うのは良く理解しています。個別細分化が進む中で包括的な歴史の記述を望むのは難しいことだと分かった上で、この労作について少し述べたいと思います。
エストニア、ラトヴィア、リトアニアという所謂バルト三国は、小国ゆえその国家や民族の実態を記した書籍がなかったようです。志摩園子氏が、実に丹念に政治体制を時系列におってその変革の時代まで詳細に述べてもらったことは門外漢にとって分かりやすく、知られていない国家の成り立ちや支配体制の変遷を理解できたのは有り難かったです。 私の関心と言えば、旧ソ連の中で、西側諸国に一番近い位置にあったとは言え、民族の誇りを胸に立ちあがったその起爆剤となる国民感情はなんだったのか、ということと、エストニア、ラトヴィアで見られるように歌謡祭での結集力はどこからきているのか、ということが本書を通読しても見えてこなかったのが残念です。政治史の側面は大切ですが、人々の営みを知る上で文化、社会事象、宗教、芸術、そして言語というジャンルへの記述がもう少しあれば複層的で多面的なバルト三国への理解が出来たのでは、と思いました。 フィンランドは、ロシアの圧政に苦しみながらも作曲家シベリウスを初代大統領にするほど結束して独立を守りました。リトアニアが歴史的にも宗教的にもポーランドに親近感を持ちながら、カトリックの存在では国家存亡の危機を乗り越えられなかった、という疑問の解消には至りませんでした。「民族のアイデンティティ」とは何によるのでしょうか。 とはいえ、中世の海上交易の頃から、ドイツ、スウェーデン、ロシアに挟まれ、建国が出来なかった国々の情勢はよく理解できました。 |
![]() バルト三国歴史紀行〈3〉リトアニア |
「・・・歴史紀行」というタイトルなので歴史の本だと思っていたが。それぞれの国を作者自身が旅をし、名所や旧跡をそれぞれの歴史的背景を交えて書いているので大変面白く読めた。最近天皇皇后両陛下が訪問された国々であるが、我々日本人には遠い国であるバルト三国を紹介している興味深い本であった。 |
![]() バルト三国史 |
バルト三国の歴史についての概説書。 バルト三国について、第一次世界大戦後の独立以降からについて言及した文献は多いが、本書はそれよりもっと昔の段階からの通史を総覧している、貴重な文献の一つと言える。バルト三国それぞれがいかにして中央から分離して行ったか、また三国内のそれぞれの動きが互いの政策決定にどのような影響を与えたかの緻密な分析が見られる。 また、ソ連崩壊後の残留ロシア人に問題についての言及も詳細なものである。 |