ネメシスの虐笑S (講談社BOX)
推理小説、翻訳、神秘思想研究、アニメ評論と様々な分野で活躍する著者が、
なんと今度は美少女ゲーム&ライトノベルに挑戦!
高校編の「ネメシスの虐笑 S」。
小説版では主に、鈴木大拙を愛読する神智学少女―衿橋美耶が
神智学、ヒンディー語、ミステリーと様々な広範囲に渡る知識を披露し、
主人公達の周りで起こる事件や謎を
解き明かしていきます。
そして、美少女ゲームのファンなら、
本書の、ヴァン・ダインとノックスの推理小説の戒律と
美少女ゲームを掛けた「美少女ゲームの戒律」の章は、うんうんと
頷いたり、クスリとくるものがあるでしょう。
そして、10章では、社会主義者として有名な幸徳秋水が、
実は神智学徒で、大逆事件もそのことと関わっていたのではないか、
という話題で盛り上がりを見せます。
高校卒業後の「ネメシスの虐笑 G」。
小説のミステリーは、1章ごとに事件や謎が解決する
短編型だったのですが、
ゲームでは、一人のグラフィッカーを巡った、長編ミステリーを
展開します。私はミステリーの部分に関しては、ゲームの方が
おもしろかったです。
私は小説の方もおもしろいと感じたのですが、
小説の方は、趣向が合う・合わないが分かれるところがあると思いますので、
小説を読んでみて面白いと感じたら、そのまま読み進め次にゲームをやり、
もし小説の方がいまいちピンとこないと感じたなら、先にゲームの方からプレイするのもいいかもしれません。
ゲームの方で過去話として小説に書かれた高校時代の話が出てきますが、
小説を読まなくても、ゲームをやる時に困るような事は無かったのでご安心ください。
エンディングは全部で4つあります。
初回プレイ時は選択肢が無く、決まった1つのエンディングに向かいます。
そして2回目プレイから、選択肢を選べるようになり、
残った3つのエンディングが解放されます。
時間は長すぎず、不足無くという感じです。
複雑な選択肢はなかったので、攻略にそこまで苦労することはないはずです。
全エンドを見たところ、ストーリー的に逢瀬菜名穂の攻略を最後に取っておくこと
をオススメします。菜名穂エンドが一番ボリュームがあり、
真エンドといえます。
ミステリーが好きな人にも、美少女ゲームが好きな人にも、
神智学が好きな人にも、これら全部が好きな人にも
楽しめる作品でした。
グルジェフの残影 (文春文庫)
ウスペンスキーを敬愛する青年主人公の視点から、ウスペンスキーとグルジェフの姿が描かれています。
「グルジェフの弟子の一人」という枠では収まりきれない、
ウスペンスキー自身の魅力が描かれた小説です。
それから、ロシア革命により荒廃していくロシアの様子の描写が鮮明でした。
グルジェフとロシア革命の意外な繋がり…。
何故ウスペンスキーは、グルジェフから離れたのか?それが解き明かされます。
彼らに関心があるなら、きっと楽しめるはずです。
しかし、ウスペンスキー、グルジェフの思想や生涯に全く興味がなく、
ミステリー目的だけで読まれると、期待が外れるかと思われます。
この小説の一番の関心事は、ウスペンスキーとグルジェフに関わる事だからです。
ミステリーの文量は非常に少ないですし、事件が起こるのも遅いです。
どちらかというと、事件部分はオマケに近い感じがしました。
私自身は殺人事件部分はウスペンスキーの物語のちょっとした休憩に近い印象を受け、悪くなかったです。
それに事件はしっかりと小説の内容と関連したもので、無理に入れたような不自然さはありません。