惑星地質学
太陽系全体について、広範にわたって解説されています。最近の成果も反映されており、日本語で一般の書籍ではこれほどのものはそうないと思います。地質に限らず、大気や磁気についても書かれており、たとえば、タイタンの気象については惑星気象学よりも詳しいくらいです。また、普段見向きもされない小惑星や、微衛星についてもけっこう書かれています。ただし前提とする知識が多く、書かれていることすべてを一般の方が理解するのは大変かも知れません。また探査機が実際に訪れたことのない天体についてはほとんど触れられていません。冥王星の出番は1ページだけです。
地質学〈1〉地球のダイナミックス
楽しい本である。網羅的に記述されている内容は平易で読みやすく、各章末の問題や文献の案内も充実していて、初心者や体系的に学びたい読者にぴったりである。特に文献紹介は一般的な新書本から論文までがピックアップされていて簡単なコメントもついているので、著者のねらいである独習者には非常に役立つ。
全三巻の「地質学」教科書の第一巻となる本書では、地球という惑星の成り立ち、他の惑星との比較から始まって、地球の内部構造、プレートテクトニクスの解説などが続く。このあたりは個々の知識はあったものの時系列でまとめて読み直すことで非常に納得がいく。
後半は水、エネルギー、元素、そして生命の循環という内容で、物質の転換・循環による生きている地球の仕組みを知ることが出来る。化学式の登場回数が多いが、図も適度に掲載されているので、反応自体にとらわれずに原因と結果を追っていけば中高生でも理解できると思う。
著者曰く、このような「広範囲な内容を一人で執筆するのは、ほとんど暴挙といってよい」ということだが、第二巻は三年半後に無事上梓された。第三巻が待たれる。
趣味の鉱石トレジャーハンター―鉱石採集探険記
この価格で176ページフルカラー、425点もの鉱石がカラーで掲載されているのは驚きだ。一見鉱物図鑑のような体裁だが、実は著者の鉱石探しの冒険談がぎっしり詰まっている。
ド素人から始まった鉱石探しが、やがて貴重な鉱石の発見に至るまで、ドタバタあり、人生訓あり、人との出会いありで読むものを飽きさせない。時には腹を抱えて笑えるような失敗談やゾーとするような体験談など、次々とページを読み進めてしまうことだろう。
カラー画像による鉱石の資料や鉱石発見の手助けとなる地図とともに鉱石採集に必要な入門編も掲載されている。初心者からマニアまで、老若男女を問わず鉱石に興味を持った方なら是非手にとって欲しい一冊だ。
岩波 理化学辞典 第5版
専門用語の説明に、別の専門用語を使用するということは避けられない。しかし、本CD-ROMの場合、説明文の中で用いられている専門用語のうち、この事典に収録されているものは、リンクにより一発でジャンプできるようになっている。これは、書籍版にはない便利な点で、大幅に検索の労力が軽減される。また、欧州語からの検索も可能であり、英、仏、独のほか、本事典に収録されている用語すべてではないが、ロシア語からの逆検索も可能になっている。書籍版の用語の説明文の中で用いられている数式や化学式、図表関係は、もらさず図版で収録されている。さらに、EPWING規格に準拠しているため、同規格の広辞苑や新英和中辞典などと同じ検索ソフトで併用することができる。
地質学〈2〉地層の解読
第1巻で地球の成り立ちを示してくれたが、本書ではいよいよ地層の形成とその変化のメカニズムについて知ることができる。
冒頭の砂丘の成り立ちと風紋のできる仕組みの解説では、フィールドワークと物理学、流体力学の組み合わせで直感のまちがいを論理的に指摘してあり、読んでいて明快で気持ちが良い。地形の形成が流体としての振る舞いで解明できることや、地層内での物理的な応力の解析、変性に伴う水の移動を化学的変化として分析するなど、門外漢からは単なる時間の経過だけが重要な要素と取られがちな本分野が、総合的な科学として見ることが出来て新鮮な刺激だった。
プレートの移動、長期間にわたる変形や熱による変性、さらに上層に降下する堆積物、これらの織りなす地層を解読して解きほぐしていく作業は非常に手間がかかることだろう。さらにそれを古文書からの事実調査や地球上の各地点での観察と照合し確認することで、地球の成り立ちとして再構成していくことは、学者から学者へのこれも悠久の営みだと言えるだろう。
第3巻「地球の歴史」でついに地球の全体像の変遷が語られるかと思うと、待ち遠しくてならない。