グレイテスト・ヒッツ・フォー・ジャパン
とてもいいCDだと思います。だけど、もう少しわがままを言えばラストの「she」はできればフランス語の「忘れじのおもかげ」をいれて欲しかった。もともとアズナブール好きの父の影響なのですが、「ノッティングの恋人」で聞きアズナブールに再会しましたね。コステロのカバーなどがCMに使われたりメジャーになりつつあるからこそ、フランス語で聞きたかったなあ。レコード&テープがありますがそれぞれ故障と音質が悪いので・・・。
栄光への賭け [DVD]
昨年「マイラ」、「ジョアンナ」と言った拘りのマニアックな逸品をリリースしたFOXのリクエスト・ライブラリー。第5弾となる今年は、更にその上を行くような充実のラインナップで嬉しい限りなのだが、その中で秘かに注目しているのが今作だ。
この映画、70年初公開時はスプラッシュ上映の憂き目に遭い、その後名画座にも掛らずソフトにもならずの幻の映画であった。
実は自分もずっと昔に深夜映画枠でたまたま放映されていたものを途中から観ただけで、面白さに引き込まれたものの、その後再見出来ず気掛りになっていた作品だ。
原題は“The Games”。内容は当サイトの作品解説を御参照されたい。
ローマで開催されるオリンピックに向け、それぞれの思いを胸に秘め大会に臨む4人のアスリートたち。でも、彼らが背負っているモノの真の意味と、彼らを取り巻く周辺の醜悪ぶりが徐々が徐々に暴かれていく辺りから面白くなっていき(と言っても、ここら辺までは未見なので憶測なんだけど)、マスメディアの横暴と圧力で真夏時でのレースは強行、そして英国代表コーチの、「オリンピックとは勝つ事ではなく参加する事に意義がある」とのクーベルタンによるあの有名なオリンピック憲章を、“そんなものは嘘っぱち”と斬り捨ててから、世紀の大レースは始まり、映画はダイナミックにそしてコミカルに大きく動き始める。
マイケル・ウィナーは、イギリスで10代から映画評論を発表し、CMディレクターとして脚光を浴びた後に映画監督へと転身、つまり、リチャード・レスターやリドリー・スコットと出自が同じと言う事だ。
スウィギング・シクスティーンの旗手として、レスターやケン・ラッセルと並び称される気鋭のフィルム・メイカーとして映画における60年代のロンドン・ポップをリードした。
事実、以前WOWOWでオン・エアされた「ジョーカー野郎」や「明日に賭ける」の何とオモシロかった事か!今作でも、ウィナー絶頂期の作品だけにその才気を感じさせる。
この後、ハリウッドに請われて本格的にアメリカを拠点に仕事を続けるが、町山智浩「トラウマ映画館」でも挙げられていたカルト作「妖精たちの森」を撮った以降、チャールズ・ブロンソンとの運命の出会いを果たしてからは、まるで御用監督の如きアクション映画を乱造させる。
イギリスとはまるで違うそのスタイルとタッチに、同姓同名の別人なのではとの影の声があったかどうかは分からないが、もし、ウィナーがイギリスを中心に映画を撮り続けていたら、と思う映画ファンは多い。
「ある愛の詩」のエリック・シーガルが脚本を手掛けていたとは知らなかったが、マイケル・クロフォード、ライアン・オニール、スタンリー・ベイカー、シャルル・アズナブールと英米仏のクセモノスターたちが競演、果たして栄光のゴールを最初に切るのは誰なのか、その結末を予想しながら鑑賞するのも楽しいだろう。
イギリスでアスリートに視点をおいた作品と言えば、トニー・リチャードソンの「長距離ランナーの孤独」が思い浮かぶが、それとはまるで毛色が違うものの、これは侮れない快作。お薦め!
そして誰もいなくなった [日本語版] [VHS]
アガサ・クリスティーの名作『そして誰もいなくなった』は英語圏で過去に4回映画化されている。最初に映画化された1945年のルネ・クレール版が、最も傑作の誉れが高い。
実は、残りの3回は製作者が全部同じ人である。ハリー・アラン・タワーズという人で、どういうわけかやたら『そして誰もいなくなった』にこだわっている。本作は1974年に製作された作品で、舞台が「絶海の孤島」ではなく「ペルシャの砂漠」に変更された。名作『オリエント急行殺人事件』が作られた同じ年に、こんなものも作られていたのだ。
決して傑作とはいえないが、こうした作品は僕もそうだけど物好きな人間が見るものだろうから、あまりウェルメイドかどうかを論じても意味がない。各人各様の見どころ(突っ込みどころ、と言ってもいい)を探してもらえれば、それでいいと思う。個人的には、フランス人のシャンソン歌手シャルル・アズナブールの声を美輪明宏が当てていることに、一番驚いた。
出演者はオリバー・リード、リチャード・アッテンボローなど、わりと豪華な方だろう。最後に余談だが、製作者のタワーズはこの後80年代にもう1回『そして誰も〜』を映画化している(邦題『サファリ殺人事件』)。この作品については、「まあこれも愛だよね」などと穏やかに笑って済ませられないくらいの駄作だった。もちろんソフト化はされていない。