全曲集
最近、村松友視氏の水原弘の評伝「黒い花びら」を読んだ。それを機に水原弘の歌を聞いてみようとこのCDを購入した。
昭和53年、水原弘は42歳の若さで他界した。
その頃幼稚園に通っていた私が彼を知ったのは、中学生の頃に聴いていたラジオから流れてきた「黒い花びら」だった。
「なんて甘く切ない歌だろう。」そして既にこの世の人ではなかった事に「幻のスター歌手」の匂いを感じ、その事で自分の心の中で更に「黒い花びら」が際立って響いたのを憶えている。
CDを聞いた感想は、、、「黒い花びら」「君こそわが命」以外にビッグヒットに恵まれず、様々な路線での試行錯誤が伺えるが、素晴らしい事に全ての曲を見事に歌いこなしている。リアルタイムでは商業的には冴えなかったのかもしれないが、今聞いてみると水原弘という歌手は高いクオリティーでジャンルを選ばず自分の歌を表現できるオールマイティーな希少な歌手という見方ができないだろうか。
特に波乱万丈の人生を送っただけあって「マイ・ウェイ」は絶品!
ホントに42歳で亡くなってるのは残念。もっと生きていればもっと可能性があった様に思う。
黒い花びら (河出文庫)
本書は、水原弘が駆け抜けた時代に掲載された週刊誌の記事や関係者の声を拾い、丹念にこの"酔いどれ歌手"の人生を追っている。ページをめくりながら読者の頭によぎるのは、「お酒を少し控えたらこんなみじめな死に方しなくてよかったのに」、「見栄張りすぎて金を浪費して」といった、呆れにも近い思いだろう。だが著者は、水原が周辺の人々から拍手を送られながら道徳的に生きるような「昼の論理」ではなく、「歌うこと」と「破滅へ向けての生活無頼」に生涯のほとんどを費やす「夜の論理」を生き抜いたのだと説明し、「昼の論理」の側から何を言っても「夜の論理を生きた水原弘には通用しない」という。
「水原弘は、自分のステージの上における"無頼"のイメージに、ステージを降りた後も責任をとった芸人だった……(中略)さまざまな歌手や役者がいるが、ステージやスクリーンでは恰好よく"無頼"のイメージをただよわせながら、そのフィクションの衣を脱げばほとんどサラリーマン感覚、世間的な気遣いをめぐらして蓄財に励んでいるタイプがほとんどだろう。水原弘は、それに反発して、ステージ上での気取った"無頼"を、日常の中でも演じて見せつづけた。」
関係者は言う。「水原弘の時代にも、そんなタイプは数えるほどしかいなかったけど、今はもう絶滅しましたね……」と。
著者は水原弘の軌跡を辿りながら、"無頼"の凄味を実感できたのがうれしかったと「あとがき」で書いている。
ちあきなおみ・しんぐるこれくしょん
題名通り、コロムビア時代に放ったシングル(A面・B面)を収めた2枚組コレクションです。
但し、「完全収録」ではないところがミソといいますか要注意点。「忘れえぬ慕情」や「かなしい唇」、「恋のめくら」などが収録されていません。
選曲から漏れたこれらの曲が意外とイイだけに残念ではあります。
が、初期のちあきなおみを知るにはこれ以上ないと断言できる初期のベスト盤と云いっても良いような趣きです。
洒脱なジャケット写真もグッドじゃないですか。
曲の好き・嫌い、良し悪しは個々の思い入れとともに違ってくるとは思いますが、私的には、
ジャズやソウルを意識した初期の楽曲は、まるで埋もれていた宝物を発見したような、心地良い高揚感のようなものが沸きあがってきて惹きこまれました。
聞いたこと無い方には是非とも聞いていただきたいと思います。
そしてこれはある種極限ですが、初期のソウル歌謡で鍛えられた歌唱を巧みに活かしたのが「さだめ川」や「酒場川」、「ルージュ」であって、
これらを聞いたときになるほどと合点がいくのです。
是非有名曲ばかりではなく、一枚目の一曲目から。トラックリスト順に聴いていただきたいです。
スーパーベスト 水原弘
99年発売の『全曲集』から「雪国」「素晴らしい人生」「お嫁に行くんだね」「港はまだ遠い」(これがラスト・シングル)の4曲を省き、曲順を入れ替え再構成したアルバム。ジャケット写真は、シングル「君こそわが命」の時に使用されたものと同じ、青を背景にしたおミズの横顔。収録曲は、黒い花びら/君こそわが命/黒い落葉/愛の渚/慟哭のブルース/へんな女/女の爪あと/遠くへ行きたい/恋のカクテル(モノラル)/黄昏のビギン/好きと云ってよ/マイ・ウェイ、の12曲。『全曲集』同様、「黒い花びら」など初期の楽曲は、ステレオで―「君こそわが命」ヒット後に―再録音されたテイクで収録。
今のオレと同じ年で亡くなった、ということもあって、近頃やけにおミズの歌が聴きたくなり、なかば衝動買いのように購入したけれど、これは大満足。12時間ものレコーディングを経て完成した伝説のカムバック曲「君こそわが命」などはもちろんだが、今回個人的に気に入ったのは、ボッサ歌謡、というだけでは表現しきれない深くてコクのある世界が展開される「好きと云ってよ」。大人のひとりGS「愛の渚」、聴いていると子どもの頃の思い出もよみがえって来るコミカルな“珍名曲”「へんな女」の2曲を作ったハマクラさんの天才ぶりにも、改めて敬服する次第(鼻歌みたいなノリで、肩の力の抜けた名曲を量産した彼は、やはり偉大だ)。そして、カラオケの席では蛇蝎の如く嫌われている「マイ・ウェイ」も、うまい人がしっかり歌えばこれだけのものになるんだ、と実感。オレの大好きなトム・ジョーンズ版に匹敵する出来だ。最高(おミズが和製トム・ジョーンズだというより、トムさんがイギリスのおミズなのだ!)。
歌詞カードの作者名のところに、編曲者のみ表示されていないなどわずかに不満もあるが、☆は5つ。
この星は、唯一無二である、おミズの歌声に捧げる。