エリ・エリ・レマ・サバクタニ 通常版 [DVD]
ふいに空間を引き裂くようにして響く轟音は、この台詞の少ない映画にあって音こそ主役だというように主張しているかのようです。ガラクタ楽器もそれら一つ一つの造形が妙な愛くるしさをもったキャラクターに見えてきます。ウィルスに侵食され自死を選んでしまう人間こそが、この映画にあっては意思を失ったモノなのであり、そうした内面的なものをまるで信じていないかのようにストーリーは淡々と進んでいるかに見えます。彼らの主張は驚くほど少ない簡潔な台詞で率直に言い表されるので、そのあっけなさが、人間は必ず死ぬのだ、ということへの不可避的な肯定にも受け取れます。いくら主張しても自然には太刀打ちできない「内面」の希薄さは世界の隅に追いやられ、いくら耳をふさいでも脳を刺激し続けるノイズの不快さこそ世界そのものなのだということを、ありのままに描いた映画で、人間がノイズを受け入れるだけの器官となることへの肯定を描いた映画なんだ、という風に観ました。
死んでも何も残さない―中原昌也自伝
著者の幼少の頃の記憶とか、育ってきたこと、2011年当初の生活の様子が本当にただつらつらと書かれてておもしろい。中原昌也のビジュアルを想像しながら、ふむふむと思いながら読んだ。かっちりとした自伝!って感じではないけれど、ところどころに時事的なことも加えつつ書かれていて面白かった。個人的には、東京育ちである著者がそれをはかなんでいることが、地方出身の私としてはすごく意外だった。
Loops [Monthly Hair Stylistics Vol.9]
とうとう完結した月刊ヘア・スタイリスティクス。毎月締め切りがある、という制限と毎月リリースできる、という自由が上手く相互作用した良作ぞろいでした、ジャケットも面白かったし。さて、本アルバムはその中でももっとも内容の濃い大傑作。昔からループものには大傑作とどがつく駄作しかないですが、これはループのようでいて徐々に変貌していく無意味な繰り返しが最高で聞き惚れる瞬間が多数ありました。ノイズのループものではMerzbowの抜刀隊が有名ですが、あの訳の分からなさをさらに丁寧にエフェクト処理した感じ。シリーズが終わって、どれから聴こうか迷っておられる方にはおすすめです。
テイルズ オブ クロニクル 『テイルズ オブ』シリーズ15周年記念 公式設定資料集 (BANDAI NAMCO Games Books)
値段の割に薄くて重い本が第一印象でしょうか。
他のキュービスト発行の本より厚い上質紙を使用しているので、 高級感はたしかにあります。
紙がいい分、印刷も綺麗で、各タイトルのメインビジュアルが映える。
正直、本屋で実物みるとおそらくビニールがけされていて中身わからないため、この厚みでこの値段??と思うかも…。
当然ながらマザーシップと言われるタイトルメインの記述。
マザーシップは最低六ページに渡り解説。
エスコートは二ページにまとめられてます。
しかしながら、エスコート含め物語のあらすじはある程度ばっちり押さえられていると思います。
リメイクありについては、追加要素の記載まで。
プレイしたことがあるタイトルは当時の感動が。
世界観も外伝は割愛部分もあれど…、網羅していただけてると思います。
開発関係者のインタビューもしっかりで、 シリーズファンなら持っていてもいいな…と思える作りだと思います。
未公開資料や開発の現場の写真も見ていて面白かったです。
人気投票の結果も記載ありでしたし。
ただ、好きなタイトルが、マザーシップよりエスコートに寄っていると物足りないかも知れませんね。
エリ・エリ・レマ・サバクタニ 豪華版 2枚組 [DVD]
オープニングから「かっこいい」という印象が続き、ビクトル・エリセの映画を思い出すような画面構成、固定カメラ、引きのアングル、そして音楽や役者オーラなど、一流映画としての貫禄を感じた。
けれど、だからこそ内容はつまらないと思った。これだけお膳立てがそろっているのに着眼点がイマイチだ。青山真治はどうしてこのような空振りを続けるのだろう。本人はかなり成功していると思っているのだろうか。けれど興行を無視しては単なる自主制作映画と変わらない。
レミング病だとかの設定も、チープな近未来SF映画のようだ。チープなりに救いのない深刻さがあればまだメリハリがあるのだけど、そのような切迫感もない。ノイズについても、音と画の構成上必要な組み合わせであって、単なる材料以上に必然性を感じない。
もちろんストーリーへ左右されない、そのような割り切りのよさが「かっこいい」出来上がりに貢献しているんだと思う。結果としてとても斬新な映画になっている。でもやはりプロモーション・ビデオのような軽いものでしかない。
やはり何か、腑に落ちないもどかしさや、胸を突かれるほどの鋭利な感覚や、かけがえのない対象を追いかけるような切迫感や。何でもいい、もっと心を動かされる映画を作って欲しい。ユリイカにはまだあったように思う。