バルカンをフィールドワークする―ことばを訪ねて
アイヌ語をフィールドワークする/アフリカをフィールドワークするの2冊を先に購入して感心し、3冊目の本書を楽しみにして取り寄せたのだが、先の2冊との違いに大いに落胆した。
なにがダメかといえば、まずマケドニア語(および南スラブ語)そのものについての記述割合が、このシリーズとしては少な過ぎる。 時折り見かける自費出版の語学留学女性の、どうしようもなく詰まらない感傷日記を思わせるところがある。 但し、こんな本を書かせた出版社に過半の責任がある。
それ以外の欠点は、既にudaudaさんのレビューで殆ど言い尽くされている。 特に「軽薄体」とは良く言ったものである。 同じスラブ語教師・黒田龍之助氏も似たような文体であるが、黒田氏の本は最初に抵抗を感じながら読み始めてもすぐ引き込まれてすんなり完読するだけの内容を持っている。 しかし、この著者はダメである。 ウンザリしながら、読了するのに3,4日、かかってしまった。 この文体は、やめたほうがいい。
他の点についても、udaudaさんとほぼ同趣旨になるので繰り返さないが、もう一つだけ注文をつけさせて貰えば、キリル文字を使わずラテンアルファベット表記にしたのが面白くない。
なぜなら、文字も含めてその言語であるからだ(・・・とする学派に、私は共感する。 岩波書店「対論 言語学が輝いていた時代」鈴木孝夫・ 田中克彦共著を御参照 ISBN-10: 400022770X)。 思うに、著者は本書の想定読者層を殆どキリル文字が分からない筈と、侮ったのではないか。 しかし、それは大いに勘違いである。大修館書店の本を1785円も出して買うくらいの読者層は、スラブ語の素人であろうがキリル文字の言語はキリル文字で読ませて頂きたいと思うはずである。私自身、キリル文字を読むのは不得意なので、できればキリル文字に国際発音記号を付記して貰うと嬉しいが、しかしラテンアルファベットでキリル文字のスラブ語(ロシア語、ブルガリア語など)を読もうとは思わない。
以上、かなり苦言を呈したが、マケドニア語という小言語を日本の言語学・外国語愛好家に紹介してくれた功績は認める。大幅な改訂版、または新しい研究成果を期待する。
萌える脳トレ
付録のCD-ROMに収録されているゲームがメインの本です。
ゲームは終了時に脳年齢が表示され、成績によって好感度の上がり具合が変わってくるという仕組みになってます。
ゲームは「計算50」「単語記憶」「文字数え」「並び替え」の4種あり、ちゃんと脳トレできる内容になっています。
ただし、この本の売りである「オタクなら思わずニヤリ!?な問題」というのが結構問題になってきます。
例えば文字数えに「白薔薇さま」という単語が出てきます。
文字数えは平仮名に直したときに何文字になるかという問題なので、答えは6文字かな?と思いますが、
正解は「ろさぎがんてぃあ」なので8文字となるのです。
こういった具合に、マンガやアニメ、ゲームのキャラの名前や用語が出題されるため、知らないと全く解けません。
この本はちゃんとした脳トレをしたいという方(ヲタ知識豊富な人除く)にはオススメできません。
私のように、脳トレもしたいけどギャルゲもしたい!って方にはオススメです。
バルカンの亡霊たち (AROUND THE WORLD LIBRARY―気球の本)
私は英文の原文しか読んでいませんが、海外ではいろいろ評価が分かれて強い反応を引き起こした本のようです。この作品の基本的なメッセージに賛成するによ、反対するにせよ、この日本人にはなじみの薄いこの地域に取り組むには、やはり最初に読んでいた方がいいと思われる本です。この本の特徴は、最初に、バルカン諸国を非常に広く捉えている点です。クロアチアからギリシャまでがその中に含まれています。特にギリシャの歴史の”神話”についての彼の分析は、非常に”挑発的”でこれまでとは違った視角に眼を開かせてくれます。第二にバルカン諸国を基本的にはヨーロッパの延長線上ではなく、オスマントルコからの影響という視角から取り上げていることです。第三に、この場所を、共産主義崩壊の前の時点で(1980年代後半)、東西のイデオロギー対立から切り離して、より射程の長い歴史の業に翻弄される統制不可能な力学の観点から捉えなおしたことです。第4に、この著作は、忘れ去られていたいくつかの著作(rebecca west,durrellやmanningの作品)の再評価を副産物としてもたらしたことです。作品のトーンはあくまでも暗くpessimisticですが、ひとまずこの絶望的なまでの描写を味わってください。