日和山 佐伯一麦自選短篇集 (講談社文芸文庫)
現代の私小説家佐伯一麦(かずみ)の仙台限定の随筆と、講談社文芸文庫としてでた新作の短編集です。
仙台在住の作者は離婚、鬱、アスベスト禍、初期の大腸癌、そして震災と、多くの災厄にもがき苦しみながら、それらを小説に書き継いできました。
しかし、その文学世界に陰惨な感じはありません。多くの不幸をしっかり引き受け、清澄な眼差しで見つめ直すことからにじみ出る強さ、潔さを感じます。
「それじゃあ、お父さん、僕たちが今いるのは『その世』なのかな?って。」
「………」
「あの子も、口には出さないけれど、人が流されていくのをずいぶん見てしまったはずですから。」
……この世とあの世の間はその世か、と私は心の中でつぶやいた。(「日和山」)
現役の純文学系作家のものはあまり読まないのですが、常に次作を待ち望める作家です。
仙台在住の作者は離婚、鬱、アスベスト禍、初期の大腸癌、そして震災と、多くの災厄にもがき苦しみながら、それらを小説に書き継いできました。
しかし、その文学世界に陰惨な感じはありません。多くの不幸をしっかり引き受け、清澄な眼差しで見つめ直すことからにじみ出る強さ、潔さを感じます。
「それじゃあ、お父さん、僕たちが今いるのは『その世』なのかな?って。」
「………」
「あの子も、口には出さないけれど、人が流されていくのをずいぶん見てしまったはずですから。」
……この世とあの世の間はその世か、と私は心の中でつぶやいた。(「日和山」)
現役の純文学系作家のものはあまり読まないのですが、常に次作を待ち望める作家です。