Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 4/15号 [捕鯨に未来はあるか]
国際司法裁判所(ICJ)で行われた日本の調査捕鯨をめぐる裁判は日本の敗訴となりました。北西太平洋や日本沿岸での捕鯨は禁止されなかったものの今後反捕鯨勢力の勢いは強くなっていくでしょう。
この判決を受け私の周りでは「ICJは白人寄りの判決をしたのか」、「条約に乗っ取った日本の捕鯨が非難されるのか」、極端な例では「今後はマグロ漁がターゲットになるのではないか」、「尖閣・竹島の裁判でも日本の敗訴となるのではないか」といった意見が聞かれました。しかし記事を読む限り前者はともかく後者については杞憂と考えていいようです。
とはいえ日本外交の問題点も明らかになったと思います。日本は「科学的な調査を続けて行けば理解が得られる」と楽観的に考えていましたが、「なぜ『クジラ文化』を存続していかなければならないのか」という根幹の部分がはっきりしていないからではないかと寄稿者は分析しています(寄稿者らは理念だけの「クジラ文化」を「クジラ・ナショナリズム(愛国主義)」と呼んでいます)。また菅長官は「国際法秩序に従う」と明言しましたが、この態度も優等生的で中途半端な態度と見られているようです。今後日本はクジラ文化存続の意義を明確にすること、あるいはノルウェーやカナダのようにIWCと袂を分かつことが求められるのかもしれません。
最後に別記事で「反捕鯨国であるオーストラリアは『反捕鯨』について与野党を超えて94%の国民が賛同するテーマである」といったことが書いてありますが(これは「反捕鯨ナショナリズム」と呼んでいいかと思います)、この点についてもっと突っ込んだ考察がほしかったです。
この判決を受け私の周りでは「ICJは白人寄りの判決をしたのか」、「条約に乗っ取った日本の捕鯨が非難されるのか」、極端な例では「今後はマグロ漁がターゲットになるのではないか」、「尖閣・竹島の裁判でも日本の敗訴となるのではないか」といった意見が聞かれました。しかし記事を読む限り前者はともかく後者については杞憂と考えていいようです。
とはいえ日本外交の問題点も明らかになったと思います。日本は「科学的な調査を続けて行けば理解が得られる」と楽観的に考えていましたが、「なぜ『クジラ文化』を存続していかなければならないのか」という根幹の部分がはっきりしていないからではないかと寄稿者は分析しています(寄稿者らは理念だけの「クジラ文化」を「クジラ・ナショナリズム(愛国主義)」と呼んでいます)。また菅長官は「国際法秩序に従う」と明言しましたが、この態度も優等生的で中途半端な態度と見られているようです。今後日本はクジラ文化存続の意義を明確にすること、あるいはノルウェーやカナダのようにIWCと袂を分かつことが求められるのかもしれません。
最後に別記事で「反捕鯨国であるオーストラリアは『反捕鯨』について与野党を超えて94%の国民が賛同するテーマである」といったことが書いてありますが(これは「反捕鯨ナショナリズム」と呼んでいいかと思います)、この点についてもっと突っ込んだ考察がほしかったです。
調査捕鯨母船 日新丸よみがえる―火災から生還、南極海へ
「南極観測船ものがたり」と同じ著者の本を読みたくなり、これも、また、一気に読んだ。
1998年末に日本は商業捕鯨再開の夢と希望を放棄したかもしれない事件が発生し、その事件は小さく新聞報道されたが、この本ではじめてその実態のディテールが明らかにされた。
一体何があったのか? 1998年11月20日調査捕鯨船日新丸が南極海に向かう途中火災を起こし、調査存亡の危機的状況に陥った。不眠不休の消火活動ならびに修理作業の結果、奇跡的な復活、翌1999年1月5日再び南極海に日新丸を送り出した。
本書は、火災、消火活動、鎮火、仮修理、本修理を時系列でたどった危機管理のドキュメンタリーだ。しかし、単なるリポートに終わらせていないのは、関係者一人ひとりが一つの目標に向かっている姿、またかれらを取り巻く複雑な背景を描くことによって、調査捕鯨全体が抱えている問題をあぶり出した著者の力量によるものだ。
調査捕鯨(捕鯨)に賛成、反対、立場を超えて読んでもらいたい一冊だ。
1998年末に日本は商業捕鯨再開の夢と希望を放棄したかもしれない事件が発生し、その事件は小さく新聞報道されたが、この本ではじめてその実態のディテールが明らかにされた。
一体何があったのか? 1998年11月20日調査捕鯨船日新丸が南極海に向かう途中火災を起こし、調査存亡の危機的状況に陥った。不眠不休の消火活動ならびに修理作業の結果、奇跡的な復活、翌1999年1月5日再び南極海に日新丸を送り出した。
本書は、火災、消火活動、鎮火、仮修理、本修理を時系列でたどった危機管理のドキュメンタリーだ。しかし、単なるリポートに終わらせていないのは、関係者一人ひとりが一つの目標に向かっている姿、またかれらを取り巻く複雑な背景を描くことによって、調査捕鯨全体が抱えている問題をあぶり出した著者の力量によるものだ。
調査捕鯨(捕鯨)に賛成、反対、立場を超えて読んでもらいたい一冊だ。
解体新書「捕鯨論争」
そもそも捕鯨の何が問題なのか?
これがニュースを見た時の素直な疑問ですが、
本書はその原点をある程度明確にしてくれるのでおすすめです。
読んだ後に思ったことは、捕鯨論争は、そもそも鯨が減っているのかすら
科学的には立証できないので、政治力や外交力が介在する
余地が多い分野なのだなということです。
この科学的アプローチの手法が確立できないと、この論争はいつまでも
終わりそうにありません。
ただし、5章の「グリーンピースの実相」で佐久間氏が語る
商業捕鯨を再開すれば、日本の捕鯨業界は補助金の類がなくなり、
利益も見込めないから自然に衰退するという説は、逆説的で非常に新鮮でした。
編著の石井氏は、反捕鯨学者というレッテルを本書でも貼られるかもしれないと
冒頭で危惧していましたが、まぁしっかり貼られるでしょう。
やっぱり、執筆陣をみると反捕鯨の立場の人が多すぎです。捕鯨推進の人々の
主張もしっかり紹介しないと公平さに欠けるという気がしました。
これがニュースを見た時の素直な疑問ですが、
本書はその原点をある程度明確にしてくれるのでおすすめです。
読んだ後に思ったことは、捕鯨論争は、そもそも鯨が減っているのかすら
科学的には立証できないので、政治力や外交力が介在する
余地が多い分野なのだなということです。
この科学的アプローチの手法が確立できないと、この論争はいつまでも
終わりそうにありません。
ただし、5章の「グリーンピースの実相」で佐久間氏が語る
商業捕鯨を再開すれば、日本の捕鯨業界は補助金の類がなくなり、
利益も見込めないから自然に衰退するという説は、逆説的で非常に新鮮でした。
編著の石井氏は、反捕鯨学者というレッテルを本書でも貼られるかもしれないと
冒頭で危惧していましたが、まぁしっかり貼られるでしょう。
やっぱり、執筆陣をみると反捕鯨の立場の人が多すぎです。捕鯨推進の人々の
主張もしっかり紹介しないと公平さに欠けるという気がしました。