翻訳調の抑制の効いた文体で、淡々と語られる、80年代トーキョーのナイトライフ。岡崎京子の『東京ガールズブラボー』(
宝島社)と、本棚に並べて置きたい。
男だとか女だとか言う差別を無視して、人間として人を愛する事がこんなに難しいなんて。アルバムの中のこの一曲を聞くと、映画を見た後のあの重苦しさをそれと同様に感じられます。
<ヒラリー・スワンク+オスカー>という点で「ミリオンダラー・ベイビー」がよく引き合いに出されるが,両作品は,彼女の演じる役柄がマイノリティ(少数性)の場に立っていることもまた共通している。かたや小さな町で男性を生き,こなたボクシングに貧困からの脱却を見出す。しあわせな時を経て迎える結末。私の感想では,このマイノリティを突き詰めていく度合いにおいて,「ボーイズ・ドント・クライ」の方が上をいく。やはり,「事実は小説より奇なり」か。
突き付けられる結末は容赦なく,観る側の胸はつぶれる。性同一性障害が決してきれい事では語られえないこともまた思い知らされる。クロエ・セヴィニー演じる役との関係やそれに添えられる挿入歌”The Bluest Eyes in Texas”(A Camp)がまた美しい。それがゆえに,結末はより一層悲劇性を帯びる。
それにしても,ヒラリー・スワンクの演技には圧倒される。あまり映画に詳しくないのでこれは的外れかもしれないが,彼女には
メリル・ストリープに相通じるものを感じる。ある種孤高をいく,説得力のある演技。映画界の評価や作品にも恵まれている。クリント・イーストウッドとの共演も。いずれにしても,注目してまったく損のない俳優である。