ポルトガルと言えばファド、ファドと言えばアマリア・ロドリゲスが有名だが、よく知らないし、好きな方ではない(唯一 Alfred Marceneiro だけは例外なのだが)。また、伝統音楽の範疇だろう。最近の
ポルトガルものを知りたかったので、手始めに話題に上ることが多いこのグループのものを入手してみた。
ベースとなる旋律はファドのようだが、少なくとも伝統的ファドの様な感じはまったくしない。楽器はアコーディオンとギターなどのアコーティックが主体であり、キーボードは主に背景音を担当する。ドラムスは無い。
絶え間なく織り重なる伴奏にのせて テレーザ・サルゲイロ ( Teresa Salgueiro )がしっとりと透き通る様な声で歌い上げる。ゆったりと流れる様な独特のサウンドが特徴だ。タンゴの様なテンポが感じられるものも何曲かある。それでも、ビートの利いたロックの様なサウンドとは対極にあると言えよう。特にアコーディオンはこのサウンドに大きく寄与している。
テレーザの声はとても美しく、郷愁と哀愁と侘び寂びがごっちゃになった様な言葉では言い尽くせない、独特の感情が感じられる。これを聴いて心を打たれない人は居ないのではとすら思える。
特に Ainda と Milagre ~ Viagens Interditas は感動的だ。
今まで味わったことが無い感覚を得た。
ドイツの教授がふとしたきっかけで今までの人生から逃れて新しい人生を見つけようとするが・・・というお話。
人生の中で時として全てのしがらみから逃れて、或は失敗した人生をやり直したいために今までの家庭、仕事、人間家系から逃げだしたくなることは誰しもあると思いますが、本書の主人公はそれを実行してしまう。果たして新しい人生が成功するのか、成功しても幸せになれるのか、という不確定要素の強い状況に自ら飛び込んでいく主人公にあこがれと度胸を感じました。人生は一度きりなのでやりたいことをやればいいのではないか、というが本書の真のテーマかもと思いましたが、どうでしょうか。
著者は哲学の学者だそうで観念的で重いテーマを扱っていますが、小説としてとても面白かったです。ひょっとすると「マルタの鷹」のフリットクラフトの挿話から着想をえたのかとも思いました。人間にとって人生とは何かを考察した小説。読んだ方が得するかもしれない一冊。機会があったら是非。
静かな曲、激しい曲、有名な曲、無名の曲、それぞれが何の脈絡もなく2枚のディスクに盛り込まれています。38曲も入っていれば当然知らない曲が幾つかあるので、添付された曲ごとの簡単な解説本が役に立ちます。
クラシック音楽の「よく聞く部分」だけを楽しみたい人には適していると思います。
目当ての曲を聴くために購入したら、別の曲が気に入る、というオムニバスのいいところを堪能できるはずです。
録音技師ウィンターは映画監督の友人にリスボンに呼び出される。待てど暮らせど戻らぬ監督。ようやく出会えたと思ったら,自分の目を通して撮った映像は死んでしまうからと撮影を止めていた・・・。
ヴェンダース自身の,映画の原点に立ち返ろうとする心の軌跡を描いたような作品。マドレデウスの限りなく澄んだ音楽とリスボンの眩いばかりの景色が,光と影を行き来する映画世界を心地よいものにする。
本作を観終えた時,魂が吹き込まれたのは彼等だけではなかったことに,きっと気付くはず。