このシリーズ、何だか度々デジタル・リマスター版が出ていますね。その是非については論じる立場にありませんが、再発売するほどに値段がどんどん安くなっていて、それはまあ良いことなのでしょう。前に買った者にしてみれば何だかバカらしいですが、廉価化することで新しいファンを開拓できる(あるいは、お小遣いでは手が出なかった若年層のファンにも買えるようになる)ならば、それはそれで素晴らしいことです。
そんなわけで、『クリスタル殺人事件』という映画について個人的な感想を。最初に観たのは中学生のときで、テレビ放映でした。初めて映像で見るミス・マープルは、想像とはちょっと違う人でした。でもそれはそれとして、アンジェラ・ランズベリー演じるモダンなマープルはきらいではありません。映画版にはアンジェラぐらい華のあるマープルがいい、と思うからです。その後、BBCのテレビシリーズでジョーン・ヒクソンが登場し、これこそがマープル像の決定版となりましたが(僕もまったく同感)、銀幕でエリザベス・テイラーやキム・ノヴァクを向こうに回して活躍するにはジョーンではちょっと地味すぎ…。アンジェラはその点、派手さにおいて申し分ないと思います。
監督は007シリーズでおなじみのガイ・ハミルトン。美しい田園風景を映し出すクリストファー・チャリスの撮影も素晴らしいし、脇に配された渋いイギリスの名優たちにも目が行きます。音楽はジョン・キャメロンという人で、僕はこのサントラが欲しいのですが、Amazonで探しても見つかりません。きっとCD化はされていないのでしょう。
『オリエント急行殺人事件』の隙のない出来栄えや、『
ナイル殺人事件』のボリューム感、『
地中海殺人事件』のゴージャス感もそれぞれ魅力がありますが、『クリスタル〜』のホッと和む牧歌的な雰囲気も大好き。悪名高いこの邦題も、封切りから30年以上たってみると、何やら風格さえ感じさせるから不思議です。今思うのは、現在86歳のアンジェラ・ランズベリーで続編を作ってくれないかな〜ということ。きっと老けメイクなしで等身大のマープルを演じてもらえるはず、と期待するのですが…。