「しゃばけ」シリーズはよくも悪くも安定し、「居心地のよいしゃばけ空間」の中で、妖たちと若旦那の日常が語られていきます。
そのぶんの温かさ、ほっこりかげんが増すとともに、緊張感やドラマのはらみ方は薄くなり、今回は物語がややよどんだ感じがしました。
特に、ストラップにもなっている鳴家たちが主人公の感もあり、「ぎゅい」「ぎゅぴー」などいちいち着く擬音?が煩雑で、物語の勢いをそぐ方向に働いている気も。それ以外の人間たちの「ひえっ」「わーっ」「ふんっ」などの感嘆詞もちょっと多いかな。
五編がそれぞれお菓子のレシピから成ることもあって、時空間の中での流れのあるファンタジーではなく、今回は無時間的なメルヘンの味わいです。
このおなじみ空間の中で考えれば、鳴家はキャラとしてとても可愛いですが、物語的にはすこし弱かったです。
その中で最後の「あましょう」はせつない友情の話で、ラストが怖い余韻を残し、この短編は「
妖怪」やスーパーナチュラルを使った意味が生きていたと思います。