最近はオーディオブックが日本でも流行りだしているが、このCDは単なるオーディオブックではない。脳への効果が期待できる特殊効果音(脳の中を音が動き回っているような3D音源)が、朗読の中に織り込まれている。
活字だけだと淡々とした古典文学も、こうした効果音が入ることで
ハリウッド映画並みに迫力が増す。文学の新しい楽しみ方を提供してくれている貴重なCDだ。何度も聞いてしまう。とくに『トロッコ』(芥川龍之介)と『よだかの星』(宮沢賢治)がお勧め。
成瀬監督が見事に復活を遂げた作品と言われる1951年の作品。
周囲の反対を押し切って結婚した夫婦が、5年経って倦怠期を迎えちょっとギクシャクとした関係になるものの最後はハッピー・エンドで終わる物語。
単純な話ではあるが、夫婦の日常生活の心理描写を丹念に描いているので最後まで飽きない。
また、肝心なところを省略し観る側に想像させる独特の編集も面白い。
そして、
大阪の下町の家並みの映像の美しいこと。
原節子は小津作品、黒澤作品と観てきたが、今のところこの彼女の1番艶かしくて美しい姿に出会えた作品だ。
成瀬極上のメロドラマ。昭和30年作品。林芙美子原作の
男女の泥沼劇を森雅之、高峰秀子の豪華キャストで描く。
戦中の進駐軍としての豊かな暮らしとは対照的な、戦後の
混乱を象徴したバラック暮らしが鮮烈な印象を残す。新時代
の波に乗り切れず零落し続け、忘れたい姦淫した男にさえ頼
り、戦中の仏印インドシナでの淡い思い出にすがりながら生
きる女を演じる高峰秀子の圧倒的な存在感。だらしなく女を
騙し続ける、どうしようもない男を演じる森雅之の繊細な演
技に嘆息する。
成瀬には珍しく銀座界隈ではなく、
代々木、
渋谷、
新宿と
いった盛り場のキーワードが頻出する。全編を通して音楽が
流れ続け、仏印インドシナや
屋久島のシーン等、ドラマチック
な場面が多い。裏ぶれた長屋が生活の苦しさを、病んだ高峰
に追い討ちをかけるような
屋久島の止まない雨と厳しい自然
が悲劇的な運命を突きつける。
理屈で割り切れない男女の機微のはかなさを見つめる成瀬
の視線に、理解を突き抜けた感動がある。