70年代後半以降のウェスト・コースト・シーンを語る上で欠かせない女性シンガーにして忘れられない名曲を世に送ったソング・ライター、カーラ・ボノフ。そのカーラの77年のデビュー作「カーラ・ボノフ」から95年の「ブリンドル」までの中から彼女自身が選曲した好企画(彼女自身の作曲でないものも含まれるが)。最後の2曲は日本盤だけの
ボーナス・トラック。その2曲を含めてデビュー作と2作目「ささやく夜」(あの
ジャケットにしびれ、来日コンサートにも行きました)から全体の2/3が選ばれている。70年代後半の盛り上がりを反映させたのかもしれない。しかし、80年代以降も数は減るが1曲の充実度は落ちない。是非本作を80年代以降のカーラの素晴しさに触れる縁にして欲しい。
それにしても、やはりリンダ・ロンシュタットが「風にさらわれた恋」で取り上げた(1)(2)(4)、「クライ・ライク・ア・レイン・ストーム」で取り上げた(8)(13)(18)に惹かれる。これらの曲がなければ、リンダの上記2作はあれほどの名盤たり得ただろうか。カーラの生い立ちを含めた解説と寡黙なカーラの各曲ついてのコメントを収録した資料も、曲の背景及び彼女の愛すべき人柄を伝え貴重。本アルバムは、ウェスト・コースト・ロックを実り多いものにした名曲群、そしてそれらを生み出したカーラに感謝の念を新たにすること間違いなしの佳作である。