芸能マスコミは森進一さんの「おふくろさん」騒動を毎日のように取り上げていますが、サザンもデビュー当時は「どういう歌を歌っているのか分からない」と日本語の専門家の人にまで批判されたグループでした。しかし、桑田佳祐と言う人はそれを乗り越え多くの人の支持を得ました。
この本はデビューから83年のシングル「東京シャッフル」までの歌詞と子供のころにどういう音楽を聴いて育ったかや、メンバー評など面白く書かれています。
言葉の意味と言うのを再確認するにはもってこいの1冊です。
桑田さんは曲先の人である。
先ず、メロディができてそれに歌詞をはめてゆく。
本書を読むと、だから、新鮮な歌詞が出来ていることがよく分かる。
「ただの歌詞」という本書の
タイトルに桑田さんの衒いが込められている。
もちろん「ただの歌詞」というのは強烈な反語である。
俺が歌っているのはメッセージソングなんかではないという強烈な自負である。
『音楽寅さん』という番組で『声に出して歌いたい日本文学〈Medley〉』という企画物を歌った。
小林多喜二、中原中也、宮澤賢治……
だがこれを僕は評価しない。
歌詞にメロディが負けた。桑田さんの敗北。
というようなこともあらためて感じられて、貴重な本だ。
小林克也さん作詞の『
六本木のベンちゃん』が載っているのも嬉しい。