本書は、日本列島に焦点を絞り、プレートテクトニクスに基づく地殻変動の大局的視点から、大地震が連鎖して発生するメカニズムを解説したものである。プレートの構造と地震との関係、地震の大きさと発生頻度に関する統計則など、2011年3月11日の東北沖大地震以後のデータも含む最新データを使って、
コンパクトに分かり易く説明されている。特に、東北沖大地震前後で東日本の地殻構造に働く力のバランスが変わり、その余波が現在も続いているとの説明は印象的だった。また、首都圏の地震危険度が高まっていることも、地殻構造に働く力のバランスの変化から説明されている。
関東地方のプレート構造については、著者らが従来モデルに改良を加え、「関東フラグメント」という太平洋プレートの破片(といっても関東平野とほぼ同じ大きさ)を想定することで、関東地方の地震メカニズムがより理解し易くなったとのことである。東北沖大地震により、地震活動が著しく活発化し、首都直下型地震の発生確率も高い状態が続いていると、著者は警告している。
本書の表現によれば、日本列島はいたるところに
活断層が走る「傷だらけの列島」である。2000年前には宮城に100メートル級の津波を伴う地震が発生したとの説もある(飯沼勇義『解き明かされる日本最古の歴史津波』(島影社)および[...])。また、最近発表されたように、想定される東南海大地震では破滅的な被害がもたらされる。日本列島のどこにいても、東日本大震災のような被害は起こりうることを自覚して、日本を挙げて防災・減災に取り組むべきことを痛感する。本書を読めば、原発の再稼働などは、狂気の沙汰であることがよく分かる。