昨年はNHK大河ドラマ『竜馬伝』での勝麟太郎役で注目を集めた
武田鉄矢氏の“ベスト・ソング”コレクション。
CMでおなじみとなった「♪飲み過ぎたのはあなたのせいよ」のあの曲から、劇場版「
ドラえもん」のあの曲、もちろん『金八先生』のあの曲まで網羅したこのアルバムは、そこはかとなき郷愁を誘う名曲揃いであると共に、役者・
武田鉄矢氏の演技のその背景にある思いを“音楽”で見せつける傑作と言ってもよいと思う。
特筆すべきは、“ふきのとう”の山木康世氏作曲による『もう春なんだなあ』(“ふきのとう”のバージョンはアルバム『
北極星』に収録)。
“春だってえのに、お別れしなきゃならない”そんな切なくも誰もが経験するその風景をまるで一枚の写真に収めたかのようなこの詩に、まさに“昭和の生んだ才人”
武田鉄矢氏を見ることができると思う。
海援隊が好きだった人もそうでない人も、アルバム一枚まるごと隅々まで味わって欲しい、そんな一枚である。
1986年の作品ですから、25年前。四半世紀です。今は60歳を過ぎてしまった人たちが、まだ若かりし頃の姿を見ることができます。
内容は、大河の「
龍馬伝」、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」と比較してしまうと、龍馬、高杉の人物像、お互いの関係がかなり異なるので違和感があります。それでも、
武田鉄矢が熱演する龍馬が一途に熱く独白するシーン(土佐勤皇党の弾圧、小倉戦争)は壮絶で脳裏に残ります。拓郎の高杉は、お酒を飲んでいるシーンばかりとワンパターンの演技で、ちょっと残念です。高杉の人間としての魅力をもっと描いて欲しかったところです。
全体を通して流れる拓郎の「RONIN」を初めとする音楽は、懐かしく、青春群像に相応しいものばかりです。