視線とも、目線とも言い換えられるが、この映画の主役は
やはり三浦春馬の「暖かい眼差し」なのではないだろうか。

「日常をそのまま切り取った作品」もしくは「ナチュラル系」
「役者の演技ではない素顔を映す」映画のふりをしていながら、
本作品はかなりいびつである。
時に視線はまっすぐこちらに向いているし
セリフもきっちり計算して発せられているように思う。

そんな映画の文法を守っている構造の中で、
不器用な登場人物に向けられる「暖かい眼差し」だけは
作り手の計算を越えて、大きく画面を包み込んでいる。
そう、言うなれば監督のでもカメラマンのでもない、
主役の視線が幸せを形作る映画なのである。