10年09月の単行本からの文庫化で,『
なぎなた』と二冊同時刊行された全六篇の作品集.
あちらに比べ,特に前半の三つはバカ要素(褒め言葉)が高く,笑える巻という印象です.
また,後半では少し変化が入り,前半のノリで押し切ってほしかった感もありますが,
四・五篇目は二冊を通じても変わり種,それでもミステリとなっているのがおもしろく,
さらに最後の篇では,著者のファンにはおなじみの『あの人』が登場というサプライズも.
なお,『単行本版あとがき』はこちらでも饒舌.やはり安定しない口調が気になりますが,
二冊の
タイトルの秘密(読んでのお楽しみ)など,作品と同様に楽しいものとなっています.
創元社からデビューしているミステリ作家の方はみんなどこか一癖ある気がします。この本の作家倉知淳さんもその一人ではないでしょうか。
(そして佳作が多いけど寡作・・・)
猫丸先輩という稀有なキャラクターを世に送り出してくれてありがとうと言いたいです。
短編連作集なので、一話づつでも楽しめますが、全体はつながっているといってもいいでしょう。
私は最後のオチでちょっとガーンとなってしまいました。ぜひ読んで確かめてください。
古くは96年から09年のものまで,ミステリ誌などに掲載された七篇を収録した作品集.
10年09月の単行本からの文庫化で,その時と同じく『
こめぐら』との二冊同時刊行です.
どの篇もベースはミステリですが,おふざけあり,しんみりあり,翻訳小説風ありと,
各篇の時期,そしてタイプも見事なまでにバラバラのため,先入観なくそれぞれを読め,
中には,これだけで終わらせるのはもったいない,シリーズ化を期待したい篇もあるなど,
好き嫌いや出来不出来といった部分まで,一冊の作品集として気軽に楽しむことができます.
また,巻末の『単行本版あとがき』は,文末が乱れ気味で少し読みづらい面もありますが,
自身による解説や裏話,執筆ポリシがユーモラスに語られ,おもしろいものとなっています.