道成寺を披くのがクライマックスと思いつつ、周辺の人間模様が色々あるので、一人ひとりのキャラ立ちしているので好きです。私もデビュー時からのファンですが、気長過ぎて少し待つのがしんどいです。でもゴッホ先生だけでもスピンオフができそうですし、葉月さんのスピンオフもできそうだし、面白いですね。この本のおかげで道成寺を見に行きました。本当は道成寺に行きたいのですが、春日大社に行く余裕も無いんで無理でしょうかねえ。鉄輪の話は影が濃すぎて不安です。根本に光が強いので読めるコミックなんですが、たまにさりげなく恐ろしく暗い内容を入れて来られるので、私としてはそちらは苦手です。なので星4つにしてしまいました。
「サイファ」やっと読めるようになりました。当時は、お洒落すぎて、というか、アメリカのさまざまな状況や人種の絡みの状況が煩雑で、作者がぎりぎり背伸びしているようでもあり、その時代を消化できるかできないか微妙なところで描いているようでもあり、と感じて作品に入れませんでした。
けれど今になって読むと、もはや、あの時代の日本の少女たちにとって刺激的だったアメリカは「ファンタジー」と化して、強烈さを失い、レトロな安定感を獲得し、ひとつの作品世界として完結しています。作者が、破綻なくひとつの世界を織り上げていたこともわかりました。
L・Aと
ニューヨークを主な舞台に、双子のアクターをめぐる人間関係の物語。ヒロインの影はやや薄めですが、この当時、生理用品だの下着だのの生々しい話を描くのはやはり実験的で、吉田秋生さんなどがヒットする前の果敢な試み(特に掲載誌を考えれば)だったと思います。
そしてもうひとつ。というかその主題以上に感心したのは、成田美名子さんの絵がまったく古びていないということでした。当時、熱心に読んでいた漫画家さんたちの絵は今見ると、すでに古い感じがします。
マンガはストーリー半分、絵が半分。ストーリーがよくても、たとえばあまりにもデフォルメのきついアニメ絵だとどうしても心に入ってきにくいです。物語における文体以上に、絵は大きいのではないでしょうか。
アニメと実写の関係にも似ていますが、デッサンや動きや何やかやがある程度、この現実に還元できる、現実を美しく読み替えられるような面を持っていてほしい。
素朴な感想を言うと、成田さんの絵を見ていると、背筋をのばして歩きたくなるし、きれいな体の使い方をしたくなるし、また主人公たちがまっすぐに見つめる目は、いつも安らかに見開かれていて、なんだか自分も目が大きくなるような気がします。
こういう絵の力も、大きなポイントだと思います。生身っぽく現実と通底しながら、でも劇画のドライさはなく、少女マンガの甘美さの域を踏み越えていない。
いまになってこういう面に気づいたのは嬉しいです。
物語もぬくもりに満ちたもので、シャープな突き放しはありません。
ヴィンテージというか、いま古典になりかかっている、一番よい時期に読んだという気がします。
もちろん、当時まったく自分に接点がなかった続編『アレクサンドライト』も読むつもりです。