今回復刊されたこの血だるま剣法は長い間、出版不可能な本として、漫画マニアの間で認識されてきた本です。当時の貸本という媒体は低俗なレッテルを世間から貼られており、この時代の作品においては、評価されていないものが沢山ありました。作品の内容、作画がイマイチのものが多いのも事実でした。その中で突出して面白い、凄い作品というと一握りの作家達にどうしても限定されてしまうのも事実でした。作家自身も生活のために、書下ろし単行本(約130p)で叩き付けるような
タッチで量産していました。この時代の作品が復刻されるというのは、出版界ではめったに無いことです。平田先生も当時から
大阪で魔像に作品を定期的に掲載したり、書き下ろし単行本シリーズを発表していた人気作家の一人です。その大胆なコマ割(A5のページ見開きいっぱいに使うことも)、コマの中に描写を留めず、奇声、や登場人物の刀がはみ出ている(裁断されているところまで、描ききっています~)作法は現在読んでみても斬新なものがあります。本作品にはありませんが、先の部分を断ち切ったGペンで書いたと思われる「!マーク」の横に同じく読み仮名として「バ~ン」と書き加えてあったりしました。当時の時代映画さながらに、読者に臨場感を与えるように、創意工夫を先生が行っていたことが伺えます。今回の血だるま剣法も例のごとくコマという枠の制約にとらわれず奇声音の表現がはみ出しまくり、映画さながらの迫力を醸し出しています。とにかく、疾走する幻之助の怒り、執念を最初から最後まで本人になったつもりで読んでやって下さい。読んだ後の、脱力感、不安感、問題提起感が大きい作品ですから。