バスター・キートン100th
著者のキートンについての3冊目の本。なお、前著の『キートン! キートン!! キートン!!!』をそのまま転載した章が多いので、ご注意。
タイトルの100thというのは、キートン生誕100年を記念しての企画だったため。
キートンの全作品のデータをまてめて解説し、さらに同時代の喜劇俳優たちを紹介した本である。データをしっかりと編集・掲載しており、信頼のできる研究書となっている。
一方で、読みものとしてはまったく味気ない。読むところはほとんどない。事典的に使うべき本かも知れない。
また、あくまでデータ集であり、分析、キートン自身についての紹介、映画についての論述などは含まれない。
バスター・キートン自伝―わが素晴らしきドタバタ喜劇の世界 (リュミエール叢書)
バスター・キートンが、ギャグや映画に関する持論を語った本としては、いちばんのものである。
たとえば、ギャグとして絶対に面白いのに受けないのに悩み、ごく当たり前のことに気づく。
「なぜ受けないのか、それはストーリーに負けてしまったからである、客がストーリーを
追っているときにそのストーリーを止めるギャグを入れても、客は絶対に笑わない」
バスター・キートン THE GREAT STONE FACE DVD-BOX 【初回生産限定】
バスター・キートンは、芝居、体技、道具のギャグをすべてやりつくした人物である。
これらを志すものはすべからくキートンに戻らねばならない。
それら作品群がこのコレクションには収まっている。
収録作品の中でぜひとも目を通すべきものをあげる。
『ザ・ハイ・サイン』
『漂流』
『警官騒動』
『文化生活一週間』
『電気屋敷』
『キートンの蒸気船』
『キートンのセブンチャンス(栃麺棒)』栃麺棒とは慌て者のことである。
『キートンの探偵学入門』
後ろの二作品には、なつかしい淀川長治さんの解説が付いている。
残念ながら『キートン将軍』 (The General) として知られる『キートンの大列車追跡』は、
収録されていないので別に購入する必要がある。
バスター・キートン短編集 新訳版 [DVD]
B・キートン十八番の体技と発想の妙を
堪能できる短編集であります。
特に、白人と先住民との関係を鋭くえぐった「キートンの酋長」は
体技と社会性の理想的な結婚の姿であるといえるでしょう。
久石譲 meets “THE GENERAL” キートンの大列車追跡<80周年記念リマスター・ヴァージョン> [DVD]
フランスのMK2社がデジタルリマスターし04年にDVD発売した『大列車追跡』の日本版。
このバージョンで特筆すべきは、何といっても画質の驚くべき美しさです。キートン映画のフィルムはチャップリンやロイドとちがってきちんと保管されていなかったので損傷や欠落が激しいのですが、このMK2版はまるで製作当時のようなクリアな映像を堪能できます。他のバージョンではつぶれて見えづらかった役者の細かい表情や、遠景の大自然の美しさもはっきり見えます。キートンファンなら、すでに他のソフトを持っていても、MK2版は絶対にコレクションに加えて損はありません。
CDとのセットで定価が少々お高いので、ファンの中には「DVDだけで廉価発売してほしかった」という声もあります。ただでさえキートンを観るのが難しい日本ではそう思うのは当然。ただ、久石譲氏があらたにつけた音楽は非常に良いです。思ったよりクラシックな感じで、しかし久石譲タッチもしっかりある。カール・デイビスの活気あるスコアも好きですが、久石氏のどこかメランコリックな曲調の方がキートンに合っていると私は思いました。本格戦争ドラマとして誠実に(誠実すぎるくらいに)作曲してくれています。
このセットで不満があるとすれば、特典映像の少なさでしょうか。フランス版DVDにはオーソン・ウェルズによる解説など多くの特典がついているらしいのですが、日本版ではリマスター解説とデヴィッド・ロビンソンによる作品紹介のみ。せめて久石譲さんのインタビューなど入れていただきたかった。
しかしキートンの最高傑作をこれだけ美しい映像で楽しめるだけで、ファンは十分満足かもしれません。こうして新たな意匠でよみがえるたび、キートンは新しい生命を得て「今」の時代にすんなりと溶け込んでしまう。時空を超えたキートンの魅力です。