友情 [DVD]
いぶし銀の名匠、クロード・ソーテ監督の『友情』。タイトルからして、最高です。
まず何より、モンタン、ピコリ、レジアニ、ドパルデュー、S・オードラン、そして、マリー・デュボワ(「ピアニスト…」のレナ♪)といった、それこそフランス映画ファンにはタマラナイ俳優陣が、その技巧を尽くして、作品を盛り立ててくれています。まずそこが、素晴らしい。
これだけ見事な俳優陣なんだから、ごく当たり前の、日常の、それこそ挫折だったり、ちょっとした親切(池に落ちたレジアニに、何気なく自前のコートをかけるピコリ!しかも喧嘩のあとで!)だったりを、丁寧にシナリオにして、室内を中心にじっくり撮れば、群像劇として悪かろうはずはない。まさに、「何気ない親切」クロード・ソーテの世界。
しっかし、モンタンが巧いな〜。弱い男はモテル!を、クヨクヨした表情で実践しています。ヴァンサン(役名)的には、いたって天然ですが。そういう意味でも、勉強になるかな(笑)。
とにかく、おすすめです!!
山風短(1) くノ一紅騎兵 (KCデラックス)
バジリスクの時から読んでいますが、山田風太郎氏の原作と
相性がいい一番の漫画家さんである、せがわ氏の作品は重厚感があり
作画も安定しています。官能表現も(『エロ』ではない)女の私が
読んでいても、うっとりします。
短編にも関わらず、2度3度と驚かされます。
BLものを読みたい方よりも、上杉家に関心のある歴史好きな方に
オススメです。…とはいえ、序盤の山十郎と直江の○○シーンも絵として
しっかり見たかったという気がしないでもないw
主人公山十郎がとても愛らしく、妖しい色気と
直江の食えない男っぷりを、もっともっと見てみたかった^^
当然ですが、ネタバレ部分が一番核となる部分について
色々と言いたくて、うずうずしてしまう一冊。
甘い抱擁 [DVD]
1969年のロバート・アルドリッチ作品。中年のテレビ女優が人気番組のレギュラーの座や愛人(若い娘!)を失う不安におびえ、それらを手放すまいともがきながら、やがて全てを失い自滅する、という残酷な人間ドラマの傑作です。撮影がロンドンで行われたことや主人公のキャラクターなどから、この作品には、アルドリッチと同世代で、ある時期までは近い友人だったジョセフ・ロージーのヨーロッパ時代の作風(「召使」や「エヴァの匂い」)に近いものが感じられます。ただ、類似があればこそ、両者を比べた時の個性の違いは顕著です。ロージーが嫌いというのではないですが、彼には自分の登場人物たちを上から見下ろす感じがつきまといます。一方、アルドリッチは、同じ高さの目線で彼らのもがきや苦悩を見つめる。そこには感傷もなく、ことさらに同情を示す態度も見せませんが、疑いなく、共感と(あまり使いたくない言葉ですが)愛情がある。本作の主人公、さらには「何がジェーンに起こったか」の2人の老女にすら、それは感じ取れます。彼らはそれぞれ何らかの意味でアルドリッチの分身なのでしょう(ロージーにとっては何なのか?実験動物か?)
なお、本作のような題材について、「アルドリッチらしくない」または「アルドリッチとしては異色」と感じるむきがあるかもしれません。しかし、本作は、「特攻大作戦」の大ヒットから得た利益で念願の自分のスタジオを設立したアルドリッチが、「何でも好きな作品を自由に撮れる」状況で、真っ先に採り上げた企画なのです。また、アルドリッチ作品には「枯葉(Autumn Leaves)」や上記「ジェーン」から本作にいたる「女性映画」の系列がありますし、彼が映画化を希望しながら実現しなかった企画の中には、後年ベルトリッチが監督した「シェルタリングスカイ」が含まれます。「アルドリッチらしさ」とは何かを定義しようとするなら、これらの事実を踏まえた上で考えるべきではないでしょうか?
Autumn Leaves [VHS] [Import]
1956年のアメリカ映画、日本未公開。監督はロバート・アルドリッチ、主演はジョーン・クロフォード。108分、台詞英語で字幕なし。オールド・ミスのヒロイン(クロフォード)は、偶然知り合った若い男(クリフ・ロバートソン)から求愛を受け、その性急さや年齢差に戸惑いながらも、これを受け入れる。しかし、親密になるにつれ、男の言動に不自然な点が目立ち始め、やがて、彼が家族の裏切りが原因で心を病んだ病人であることが分かってくる、というストーリー。一見すると、サイコホラーとも取れそうなお話ですが、実際に観てみるとそうではありません。これは奇妙な味の「恋愛映画」なのです。主演のクロフォードは、1930年代からのスターですが、当時は50歳を超えていました。その彼女を主演に恋愛映画を撮らねばならない、という企画上の制約をクリアするための苦肉の策として、ホラー映画にも成りかねない題材が選ばれたのでしょう。しかし、こうした一種の際物企画だったにもかかわらず、当時売出し中の若手だったアルドリッチ監督の演出とクロフォードの熱演(水着姿まで見せています)とにより、出来上がった映画は見ごたえのある人間ドラマになりました。アルドリッチはアクション映画の監督と言われますが、「倫理的に極限に追い込まれた状態で決断をせまられる人間」を描くことこそ彼の本質ではないかと個人的には思っています。この映画のヒロインも、「病気を治さなければ愛する男は破滅する、しかし、病気が治ったとき男は自分を必要としなくなるだろう」という状態で決断を迫られるのです。その意味で、本作はいかにもアルドリッチらしい作品、彼のファンには必見の1本です。