萩原健一演じる主人公が桃井かおりの女子大生を殺す。理由は自分の野望の障壁となるからである。
(妊娠した女子大生は主人公に結婚を迫る。しかし彼には資産家の令嬢との縁談があった…)
実在の事件がモデルで、女子大生のお腹の子供が被告のものではなかったことから男に同情が集まり、被害者には非難が浴びせられた。
映画版の方では萩原が計算高い野心家で、男が悪いようにしかみえない。
青春の蹉跌 [VHS]
高校生の時にこの映画を観ました。
当時「青春の蹉跌」の意味もわからず、只単にショーケンが好きで観ました。
数十年経った今、再度ビデオで観て改めて、「音楽」&「時代背景」&「もやもやした青春時代」等一気にその青春時代に戻った気分になり懐かしく観ました。
やっぱりショーケン最高&井上尭之さんの音楽も最高でした。
金環蝕 [DVD]
大映が総力を挙げてオールスターキャストで描いた名作。しかし勧善懲悪どころか登場人物すべてが悪人という面白い構成は、若干配役で失敗の感を免れえない。主役級の俳優を惜しげもなく脇役に当てはめたキャスティングは、もっと別の役なら生かせたであろう出演俳優の持っている個性を完全には生かしきれていない。ストーリーに関しては実話に基づいているだけにケチのつけようもないのだが、この当時には相当幅を利かせていたであろうはずの暴力団が全然絡まないことに違和感を覚える。石原(=森脇)にしても頼りにする先はいつも零細で、冒頭の威勢の好さからは想像もできないくらいある時点を境に弱々しい爺さんに成り下がってしまう(宇野の演技に相当助けられた)。一度観てみると後味の悪さのなかに社会の闇が見えて、感慨深くさせられるが、二度目には後味の悪さだけが残り、三度目には妙なストーリー展開の部分と後味の悪さだけが色濃く残る。名作だが、非常に微妙な気持ちになる一作だ。
神阪四郎の犯罪 [DVD]
いやーー面白かった!すごい映画です。
神阪四郎(森繁久彌)はある出版社の敏腕編集長。女好きでお金に節操がない彼の周りには、偉そうなくせに手癖の悪い作家や、男に遊ばれつつ自分もうまく利用している事務員や、貞淑を絵に描いたように見えるけれど計算高いところもある妻(新珠美千代)…。彼が使い込みで会社から訴えられた後、愛人(左幸子)と心中事件を起こして自分だけ生き残り、彼を裁くための裁判が始まる…。
この映画の評判を見ると、「羅生門のように、誰もが自分に都合のいいことばかり言って、真実は闇の中だ」というようなことを書いてる人が多いけど、そういう普遍的なテーマを何を使ってどう料理するかが映画です。このテーマ自体はほかにもいっぱいあるよ。「12人の怒れる男」とか。「鍋の中」とか。(←これ、映画化された「八月のラプソディ」より原作が好き)。
若いころの森繁ってほんとウサン臭い敏腕営業マン…というよりデパートの包丁売りみたいで最高ですね。凄みのなさが。彼と、左幸子だの新珠美千代だのが平然と演じてるから見応えがあるんじゃないですか。この監督もすごいですね。人間のイヤらしさ、面白さを徹底的に公平に撮っています。役者さんたちも、ノリノリで演じてます。
森繁のすごさってのは…どんな場面でも…詐欺師でも誠実な男を演じていても、生き延びるために必死なんですよって顔に書いてあるところだ、と思う。嘘かもしれないけど真剣なんですよ、って。本当かどうかなんてどうでもいいじゃないですか、こっちは真剣なんですから。って感じ。人間、大御所になんかなってしまったら、これほどつまらないことはないです。(極論ですか?)こういう軽みって身につけようとして着くもんじゃないから、一生インチキジジイでいてほしかったです。
この年代の日本映画って、本当に面白いものが多いですね。黄金時代といっても過言ではなさそうです。
生きている兵隊 (中公文庫)
中国人を虫けらのように殺害する衝撃的なエピソードから物語りは幕を開ける。
いかに日本人がアジアの人々に残虐であったかが分かることもさることながら、芥川賞受賞の著者のたぐいまれな表現力に舌を巻きます。
戦場でありながら、風に揺れる花々、沈む夕陽、満点の星々・・・自然が息づいている表現は素晴らしかったです。
そして心が狂っていく兵士たちの心情の描き方も。
だが日本は戦争被害者であるが加害者であったことを決して忘れてはならないと思わせるような作品です。