本放送ではテーマ曲はNHK交響楽団が演奏していますが、本版では都響が演奏しています。
<本放送の演奏はこちらに収録>
決定版 大河ドラマ全曲集NHK交響楽団のオンエア演奏も良いと思っていましたが、こちらも良い演奏だと思いました。
価格面で購入を迷いました。
いずれ在庫もなくなるのであろうと思い、思い切って購入。
価格と内容だけを単純比較したらちょっと割高感はありますが、
太平記や三枝さんのファンにとっては持っておきたい1枚かなと思いました。
本放送やDVDで何度も作品を見ている私にとっては、永久保存しておきたい1枚だと思いました。
-
足利政権草創期において主従制的支配権を掌握する尊氏と
統治権的支配権を司る直義。
この二頭政治の軋みが、直義と幕府執事高師直の対立、
師直の武装蜂起と直義の出家を経て尊氏・直義兄弟の直接対決に至る。
勝利を収めた直義は、師直らの出家を条件に尊氏と和睦するが
これを無視した上杉能憲が師直らを族滅に追い込む。
この際の尊氏の胸中を、
「自分に忠誠を尽くした高一族を守れなかったことに痛恨の思いを抱き」
「高を滅ぼした上杉は許せない」
と忖度する著者の視線は誠に核心を突いている。
兄弟相剋の第二幕が始まるのは不可避であったが
尊氏・直義兄弟の命のやり取りではない。
(当該期の知の体現者・洞院公賢の喝破する如く、実態は薬師寺公義ら高残党と上杉の戦いと見るべきである)。
-
「養子の基氏と上杉憲顕らとともに鎌倉府を固め、兄尊氏との和平を実現し
京都(尊氏−義詮)、鎌倉(直義−基氏)の兄弟国家を実現する」
というヴィジョンを持つ直義に対し
尊氏が目指すのは上杉の排除であり
その一点を賭けた決戦を制した尊氏に
最早血を分け苦楽を共にした弟の命を奪う理由など何もない。
良質の史料には記述されない「直義毒殺」が
因果応報の観点からの『
太平記』の捏造であることを鋭く剔抉する著者の慧眼を称えたい。
-
東国の主の座は基氏の子孫に継承された。
尊氏・直義共通の構想であったであろう「直義による基氏の後見」は見果てぬ夢に終わったにせよ
そしてその後の東西関係が波乱の連続であったにせよ
「京の夢、鎌倉の夢」はともかくもその像を結んだと言って大過あるまい。
-
弓削道鏡・
足利尊氏・田沼意次を「日本史の三大悪人」とする歴史観は、さすがに過去の遺物(で、ほぼその評価は今や逆転していると言ってよい)であろう。にもかかわらず、過去に押された負の烙印の大きさのためかドラマの主人公にもなれずトータルな人物像がいま一つ知られていない
足利尊氏。その論理や行動を近年の歴史学の成果を踏まえ、尊氏本人のみならず後醍醐帝や楠木正成からの視点も交えて浮き彫りにした、貴重かつ優れた番組である。惜しむらくはゲストのコメントにややシャープさが欠けていることだが、それを差し引いても双手を挙げてお薦めしたい。