経営学についての本当ことで,参考になる内容があるのではないかと思い,本書を購入した。著者は
ニューヨーク州立大学バッファロー校のビジネススクールでアシスタント・プロフェッサーをしているとのこと。経営学を学問的な側面から,ていねいな文章で解説してくれている。私が本書で参考になった点は,次の通りである。
・経営学は,科学が「世の中の真理を探究すること」であるのと同様に,「企業経営の真理」を探求する。
・ポーターのファイブ・フォース「新規参入圧力」「企業間の競合圧力」「代替製品・サービスの圧力」「顧客からの圧力」「サプライヤーからの圧力」のいずれの圧力が強くなってもその産業では競争の度合いが高まるため,望ましくない。
・
ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)による信頼関係は,「自分が相手に良いことをすれば,いつかそれが何らかの形で自分に返ってくる」という期待感が出てくるために,相手を合理的に信頼できるようになるということ。
・ストラクチュアル・ホール(構造的な隙間あるいは構造的空隙)を多く持つ人は,ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため,それを利用して得をすることができる。ストラクチュアル・ホールに囲まれているからこそ,情報やモノ,資源,お金を「つなぐ」役割が生じ,ひいてはその取引をコントロールして多大の利益を上げることができるわけです。
以上である。この本から,経営学とは企業のデータを統計分析して,企業経営の真理を解き明かす不変の理論を導き出すことが目的であるということがわかった。しかし,著者も述べているが,アップルやグーグルなど,統計データから明らかに逸脱した企業が,大きな収益を上げていることを考えると,企業のデータを分析すること自体に意味があるかという疑問を投げかけている。そして,逆にそれらの企業が統計データから外れているということを認識するためにこそ統計データが必要であるという発想は,なるほどと感じた。また,経営学自体がまだ生まれたばかりの学問で,今後どのような方向へ進んでいくのかも未定であることもわかった。現状では,結果から理論を構築することに重きが置かれているようだが,著者は医療の分野では原因(理論)がわからなくても,対症療法が確立されていることを例に挙げ,経営学もそのようなスタンスを取るべきではないかと意見を述べている。私も著者に同感である。さらに,「ストラクチュアル・ホール」の説明は,私にとってはとても新鮮で,これはむしろ社会学的なものであると思うが,今後の私の思考に大きな影響を与えてくれたと言える。全体的に見ると,現在の経営学について,とてもわかりやすく書かれていて,かつそれだけでなく,それぞれの理論に対する著者の私見も述べられていて,とても読みやすかった。
巨匠・ケインズーサムエルソンースティグリッツの経済学(本流)の
流れが短時間でよく分かります。
残念ながら現在の経済学は混沌としており、グローバル経済は海図無き航海の状態です。
今、世界経済で一番問題なのはスティグリッツ教授の指摘する「世界の99%を貧困にする経済」でしょう。
「極端な経済格差」は何としても阻止しなければならないのは先進各国指導者たちが分かっていることです。でも目先の利益に流されてしまうから現実は反対の方向へ向かってしまう。
一部の貪欲な銀行家、ヘッジファンドらがグローバル化・成長神話を旗印にリーマンショックの反省をまったく等閑にしいるし、指導者たちも黙認しています。
スティグリッツ教授を始めグローバル化の弊害に頭を悩ませている元マネタリスト経済学者は大勢います。
「根拠なき熱狂」でリーマンショックに警鐘を鳴らしたシラー教授(2013年
ノーベル賞受賞決定)も含めて、
新ケインズ派の学者理論がもっと尊重されるべきなのです。