天才とはこういう人を言うのだろう。この人のプレイは何も考えていないように聴こえる。もちろんいい意味でだ。体の中に音楽がなければこういうプレイはできない。マイルスのようによく練られた音楽も素晴らしいが、こういう「天然」な音楽に理屈は要らない。だからこそ時代を超えていつまでも瑞々しく、いつまでも色褪せない。
この人に匹敵するプレイヤーと言えば、チャーリー・パーカーくらいではないか。深刻にならず、しかし言うべきことはしっかりと音で語ってくれる。
ジャズを音楽として認めないような人もいるが、ピーターソンやパーカーを聴くと、逆にこれこそ音楽だとも思える。
名盤というと何か神棚にでも飾るべきもののように思えるが、誰が聴いても楽しめるこうした演奏こそ、本来は名盤と言うべきだろう。このSACDがまた素晴らしい。目の前でプレイしているような臨場感。音が鳴った瞬間、部屋が
ジャズクラブになった。体の中で音楽がスウィングし始める。こういう演奏を生で聴けた人たちは幸せだ。うらやましい。
あのカウント・ベーシーとオスカー・ピーターソンが競演。夢のような
セッションが楽しめます。
2曲目では気のあった同士がピアノで話をしています。ときには冗談が出たり、真剣に語り合ったり、
ジャズピアノの大御所が掛け合いをしているあたりがたまらない。
私もその中に入れてほしいのですが、そんな余地はありません。
お囃子(?)はドラムスとベースです。
ピアニストの右手がロマンティックなアルペジオ(分散和音)を奏でる名曲といえば?
ポップスならYour Song
クラシックなら月光、愛の夢第三番
ジャズなら故オスカー・ピーターソンのLove Balladeは挙げたいところ。
この楽譜を買ったお目当てはなんといっても、そのLove Balladeです。穏やかな、美の極致のような、子守歌のような、この曲は、弾いていても本当に癒されます。月光より易しく、弾きやすいです。メロディとコード記号が書いてあるだけの味気ないリード譜だけでなく、ちゃんとオスカー・ピーターソンが弾いたようなアルペジオでも採譜・収録されています♪ オスカー・ピーターソンのオリジナル楽曲の中で、一番弾き易く、主題だけ弾いても様になる曲ではないかと思います(5ページ分の曲ですし、短い中でも起承転結のような物語を感じさせる曲になっているからです)。
さすがにアドリブ展開までは採譜されていませんが、でもこの主題をピアノが奏でるのを聞けば、オスカー・ピーターソンを愛したベーシストなら、引き続いてベース・ソロを、ギタリストなら、ギター・ソロを奏でたくなること請け合いです。オスカー・ピーターソンを愛した
ジャズ・ファンならば、オスカー・ピーターソンを偲んで、しばし物思いに浸ることでしょう。それだけでも買いですが、さらに、この楽譜集の巻頭言は、作曲者オスカー・ピーターソン本人です。楽曲解説もあります。
耳コピするのもいいですが、ピアノ・ピース以上、映画パンフレットぐらいの薄手の楽譜で値段もそのような値段ですし、おすすめです(ほか4曲のオリジナル楽曲の楽譜もついていますし)。
オスカー・ピーターソンが亡くなって早数年が経ちますが、20世紀から21世紀初頭にかけて活躍した最大の
ジャズ・ピアニストの一人、偉大な音楽家として、彼が音楽史に残した軌跡は、弾きつぎ、語り継いでいきたいところです。