近年の「廃線ブーム」に始まる、「廃村」、「廃道」、「廃墟」、そして「秘境」といった、一連のシリーズ書籍の刊行ラッシュには正直うんざり気味なのだが、まだそれらに手を出したことがない入門者には比較的入りやすい1冊ではないだろうか。
「封印された」とあるけれど、実際には足を運ぶのが難儀至極なわけではないし、本書を読んで現地訪問を思い立つ読者がいたとしてもそれほど大きな危険はないと思えるからだ。
紹介記事を読んで実際に足を運んでみたら遭難しましたなんていうのでは洒落にならない。
「身近」と「秘境」は相反する言葉だが、程よいあたりで折衷したと取ればさして気にはならない。
それにしても、最早日本国内には本当の意味での「秘境」というものは存在するんだろうか。
現在のブームのさらに上を行くコアな内容の“国内”秘境探検と言ったら、「尖閣諸島」や「硫黄島」、「沖ノ鳥島」くらいしか残っていない気がする。
その内にこれらの島々も突撃ルポが刊行されたりして。そうなったら別の意味で問題になりそうだ。
作者は医学関係者ではないだろう。
タイトルも日本語的にはおかしい。「科学する」という日本語はない。「科学的に解明する」としなければならないだろう。だが、中身は、ためになると言える。人には、「心という臓器はない」そして、だから「心の病」という病気はないと断言している。中身をよく精査すると、著名な脳学者の言ったことの、つぎはぎだ、と思える。もっと色々と説明が欲しいところだ。そこが物足りない。早野梓のホームページの、「欲望という名の人生電車」は、作家としての苦悩がうかがえて面白い。やはり「言語論」からのアプローチはさすが作家だと思える。「人が生きていくのに必要なのは目的ではなく、欲だ」という言い方は初めて聞いた。私は、これで人生がすっきりした。