まず最初に、すでに何度もリピートして聴いており、私的にはかなりの良盤である。
2013年5月のブルーノート公演を経て、Jeff Berlinの進言によりレコーディングされた新作。
前作「Tricoroll」はここ数年の“トリオシリーズ”の中では原点回帰的というか、
Jazzテイストが強く打ち出されていたのに対し(これもまた素晴らしかった)、
盟友Jeff Berlinとロック色が強い才人Virgil Donatiをリズム隊に迎えたことでサウンドはよりハード&熱血路線へとシフトした。
21世紀に入って続いてきた海外ミュージシャンとの共演プロジェクト(ボナ&オラシオ、ヤネク&オベド、
リトナーやマシューギャリソン&スコットキンゼイとの共演など)の中では最もミュージシャン自身が
バンドでのプレイをエンジョイしているのが、このトリオの音楽が熱く感じるポイントだろうか。
ライブを観た印象では、Jeff、そしてVirgilがそれぞれとのプレイを心から楽しんでおり、
それが音楽そのものに良い意味での影響を与えているようだ。
楽曲面でいうとVirgilの貢献が本作最大の注目点。
香津美さんがアラホばりのアーミング、表現を聴かせる“Braford 2013”的な「Secret Of Tokyo」、
Vinnie Colaiutaの“I'm Tweaked”風変態リフ&グルーヴ、そして超絶プレイが聞ける 「The User」、
そしてドラマーの書いた曲とは思えないハーモニー展開の「Reflection Of Paris」と、
このアルバムのハイライト曲を作って、すっかりトリオの顔となってしまった感が強い。
Jeff Berlin校長はというと、従来よりも“プレイの表現”に重点を置いた円熟したプレイ、
たとえばロングノートに大きなヴィブラートをかけてシンセ的な表現を行ったり、
得意のカウンタープレイよりもベース本来の役割に徹している印象。
弾きまくりのバンマス、叩きまくりのドラムに対するアプローチから考えた手法だと推測できるが、
さすがベテラン、他のプレイヤーを生かすツボはしっかりと押さえている。
Jeffの書いた曲はブルージーさを感じさせるオトナの音楽。でもベースは聴かせてくれますよ、というもの。
これも素晴らしい。
11月の再来日公演時にJEFF自身がこう語っていた。
「このバンドは例え“2回”でも同じプレイはしない。その音楽的な熱量は恐ろしいほどだ。
今回のツアー前に5週間ほどHBCでプレイしてきたが、今ここにきて私はこれまでにないほど“進化”している。
Damn! This group is hot.(Wow! このバンドは最高だぜ!!)」
香津美さん自身のプレイはまさに「絶好調」。
自身の書いた
タイトル曲、そして11月の公演でも披露していた「KOKORO」はいずれも今後の定番になり得る出来だ。
愛らしいBeatlesの名曲、そしてセルフカバーとなる「JFK」も聞きどころのひとつ。
総じてシンプルな録音だけど、このトリオの場合そこがいい。
遍歴を迎えて更なる進化を続ける、我が国が生んだ天才プレイヤー渡辺香津美。
2014年3月にはリトナーとの再共演も予定されているが、そちらでも何かしら形になるものを残して欲しいと期待する。