アイアムのラッパーとして活動している人物のソロ。アイアムの中でも一際VIBS、存在感のあるラッパーだが、このAlbumではさらに全開です。音の世界感、RAPの完成度はかなり高く、WU-TANGやダマジャ好きは間違いなく買って損はないです。全曲オススメ。
分量・内容とも
三国志演義(以下
三国志)と比較するとオーバーではありますが、他に適当なキャッチフレーズを思いつきませんでした。内容は恐らく数年か、ひょっとしたら1年に満たない話なのかも知れませんし、敵対する陣営も三つではなく、2つです(劇中語られる、それまでの展開では3つだが、劇の開始時には2つとなっている)。
三国志全体と比べるよりも、
三国志の一挿話に匹敵する程度の規模ではあります。しかし、そこで描かれる虚々実々の駆け引き・策謀・智謀の数々は、
三国志のエピソードと比べても遜色ないと言えると思います。
舞台は紀元前4世紀のインド。マガタ国のナンダ王家を滅ぼした新興マウリヤ家の王チャンドラグプタと彼を奉じる宰相チャーナキヤ(史上別名カウティリャ(「狡知者流」の意)としても知られる)相手に、中原進出を狙うインド西北部山岳王の元に逃亡た旧ナンダ王家に忠誠を誓う旧ナンダ家家臣ラークシャサは、対マウリヤ家への知略を尽くした策謀を開始します。双方多数の間諜を送り込み、陽動・暗殺・間者を前にした芝居・文書偽造・些細な事象を策謀と見抜くか見抜けぬか、など当初「
サンスクリット文学史 (1973年) (岩波全書)」で短い梗概を読んだ時には、日本語訳で170頁に満たない程度で、非常に複雑な筋立てを描ききれるものなのか、疑問に思いましたが、読了後、実に見事に描けていることに驚きました。単に勝利するだけではなく、好敵ラークシャサをマウリヤ朝に仕えるよう取り込むことまで想定して手立てを尽くす筋立てには、昔読んだ十八史略物語での、諸葛孔明が、若き魏国の将姜維を寝返らせたエピソードを思わせます。
その仕掛けは、第一幕でチャーナキヤが配下の間諜に次々と指示を与えながら、これまでの経緯を独白。第二幕ではラークシャサが配下の間諜に指示を与えながら、事前の経緯を独白するという手法で複雑な背景を描き、三幕以降、登場人物が増加しながら、陰謀の成功・失敗が描かれてゆくというもの。戯曲でここまで複雑な陰謀劇が描けるものなのか、と唸らされました。とはいうものの、本書の冒頭10頁程を用いて訳者が梗概を記載しており、これが役立ったことも確かです。
本書で残念なのは、擬古文。私のレベルでは、訳者の擬古文が上手いのかそうではないのかわかりませんでしたが、同時期に幾つか読んだ他の古代インド戯曲と比べると読みにくいものがありました。本戯曲は、1926年にも一度邦訳が出ていることが冒頭に記載されていますが、訳者が既訳を確認していないと記しており、訳者の力量不足ではと訝りはしたものの、最後の頁に、本書出版の1月前に訳者が逝去していて、訳者も不分明な性格のまま出版することになった心情を吐露しています。まずは本書を出してくれたことに感謝を捧げる次第です。
本書は5世紀初頭にインド北部を支配したグプタ朝時代の作品と考えられているとのこと。古代インド劇のイメージも大きく変わりました。
1988年春、
ロンドンに活動拠点を移した(1年ほど)小室哲哉さんの、生い立ち・ルーツ・思考等が、事細かにつづられているパーソナルブックです。