価格が高すぎるだとか、1STを買ったファンの立場が無いとか、パッケージのデザインや細部がショボ過ぎるとか、
色々と言われていますが、あえて『ツイン・ピークス』と言う作品のDVDディスク内容に於いての評価をさせて頂きます。
ディスク9枚に渡る本編は、全編にリマスターがなされており、とても20年近く前の作品とは思えないほど綺麗に蘇っています。
さらに名物『丸太おばさん』の冒頭コメントもON/OFFが可能で(しかしこの映像だけは未リマスターなのでやけに雑です)とても親切な作りです。
ただ、『前回のあらすじ』が無い事は少し残念でした、実際、様々なエピソードが複雑に交差する物語ですので、
私としては『丸太おばさん』と併せて『前回のあらすじ』も重要に感じました。
もう一つ、各エピソードにはそれぞれ細かいチャプターが付いているのですが、
メニュー画面からはエピソード
タイトルしかセレクトできず詳細なチャプターメニューはありません、
また数エピソードに至っては、
タイトルロールを飛ばそうとするといきなり10分後辺りに飛んでしまう事もあり、
私は毎回
タイトルロールをリモコンで早送りしていました。これは本当に不便でした。
物語に関しては申し分ありません、シーズン1は問答無用のサスペンスドラマの傑作で、
奇妙なキャラクターと心地よいヒーリングのような音楽を楽しませてくれながら、衝撃のラストを迎えます。
シーズン2も序盤はテンポ良くローラパーマー殺害事件を描き、そしてエピソード16にて、ローラ事件はこれまた衝撃のラストを迎えます。
ここまでは、ほとんどの方が文句なしに楽しめる最高のストーリーでは無いかと思います。
エピソード17以降は、未解決の事件の伏線回収やツインピークスの住人達の新たな一面を見ることが出来ます、
ただストーリー展開が割りとゆったりし始め、ローラ事件の様な軸となる物語も上手く定められず、ドラマの感じがガラッっと変わってしまう為、
序盤のサスペンスを期待している人には少々面食らう事もあるかと思います、
私はローラ事件の緊張感が解れて愛着のあるキャラクター達が普段の生活を取り戻しつつある、そんなスピンオフの様な『ツインピークス』を微笑ましく見ていました。
ここが評価の別れ所だと思います。
ただ、ジェームスの不倫話は要らなかったかな??
そしてエピソード終盤に、『ウインダム・アール』と言う新しい敵が現れるのですが、
このキャラの描き方が、わりと良くあるタイプの猟奇殺人犯的で面白くありません。
ローラ事件の時のようなハラハラやドキドキがあまり感じられず、チェスの駒を使った殺人予告も今ひとつ効果的ではありません。
この辺の製作サイドの葛藤は特典ディスクで一部語られています。
しかし、物語はディビッドリンチが製作に復帰したラスト3話で大きく輝きを取り戻します、
小出しに情報を投げかけていた、『ブラックロッジ』と『ホワイトロッジ』がいきなり存在感を増します。
特にリンチが監督した最終話は、身の毛もよだつ演出でローラ事件の時の興奮を取り戻してくれるのです。
このドラマをみて、TVという商業媒体で作家性を維持する事の難しさを素人ながらに感じました、
それは最期の10枚目の特典ディスクのメイキングとインタビュー集で
スタッフやキャストが悔しそうに語っているのを見て痛いほど良く分かりました。
特典ディスクでリンチとクーパー捜査官、そしてシェリーがチェリーパイを囲んで笑いながら当時の思い出を十数年ぶりに語り合っている映像を見ていると、
シーズン3が実現しなかった悔しさがとてもよく伝わってきて、思わずこちらもグッと来てしまいました。
☆はディスクのチャプター関連・あらすじ未収録・メニューが全て
英語(特に特典ディスク!)といった部分が不親切な為マイナスです、
しかし作品の内容は申し分ありません。
当時のファンならずとも、新しい世界観を楽しみたい方には必携のBOXです。