DVDで映画を見てとても感動したのですが、日本のDVDには
英語の字幕が入っていなかったため購入しました。
読んでみるとヒンディ語はもちろん、
英語についての解説も実に詳細かつ丁寧で、自分で辞書を引いて調べていただけでは
誤解して理解したつもりになっていたであろう点も数々発見でき、大変勉強になりました。
もしもDVDに
英語のキャプションが入っていたとしても購入して全く損のない良書だと思います。
※映画内容について詳細な部分があります 未見の方はご注意ください※
ブームが過ぎてから、と思っていたら、メインの俳優がストリートキッズになっていた
とかのニュースで話題が再加熱し、随分遅く見ることになってしまった。
世界中でブームを巻き起こしたクイズ番組、「クイズ・ミリオネア」。
インドのテレビ局で、18歳の少年が前人未到の最高金額を手にしようとしている。
しかしあと一問を翌日に控え、少年は不正を疑われ逮捕されてしまう。
少年は何故学者をも上回る知識を備えていたのか。
収録が始まる夜までに、彼は無実を証明できるのか…
とにかく映像が素晴らしいと思う。
小さな、本当に小さな家々が集まって出来た巨大スラムの空撮、
荒野を疾走する
列車の屋根に立つ二人の少年、
蜃気楼のように聳え立つタージ・マハールのイスラム風の天蓋、
踊る少女の腕にヘンナで描かれた複雑な模様。
「駆け抜けた人生の途中にヒントがあった」というような予告コピーがあったが、
少年が取調官に語る半生は余りにも過酷で、宗教対立で母を亡くし孤児になってからの彼は、
平和に暮らす者には知り得ない事を知り、また逆に、富める者にとっての常識を知らない。
祖国の高額紙幣に描かれた肖像画は見たことが無くとも、観光客が恵んだドル札は覚えている。
観光案内タクシーの
タイヤを盗まれた八つ当たりに、子供の主人公を平気で殴る運転手の前で、
観光客に「本当のインドが知りたいんですよね?これがインドです!」と叫ぶシーンがあるが、
その時の観光客が「本物のアメリカも見せてあげる」と主人公に金を恵む。
これは勿論根本的解決ではなく、拝金的な資本主義国の傲慢さを顕していたと思う。
そして、主人公がひたすらに初恋の少女を探し続けるひたむきさが泣かせる。
それ故に対立した兄が、裏社会に身を落としてゆく。
ただ横暴で放埓な兄のキャラクターが前半で強いからこそ、その生き様が終盤に生きてくる。
しかしキスシーンで終わる映画なんて久しぶりに見た気がする。
すぐ浮かんだ映画ではトム・クルーズの『トップガン』位だ。
エンディングでは突如インド映画お決まりの群舞が始まり、
北野武監督の『座頭市』かよ!と突っ込んでしまった。
最近読んだ記事によると、子供の眼を潰して物乞いをさせるマフィアは実在し、
しかも、赤ん坊を攫ってきては物乞いに一日いくらで貸し出すシステムまであるそうだ。
マフィアの支配下にあるなら、収入は全て上納させられ、保障されるのは僅かな食料と寝床のみ。
それでも子供達は、仲良くするなら、自分達を蔑む(カースト制の影響もあるのか)街の人々より、
マフィアを選ぶと言う。「誰だって無視されるより、相手をしてくれる人がいいに決まってる」
その文の横に添えられた写真の、子供達の瞳に見据えられ、胸が痛んだ。
フィリピンとおぼしき国のゴミの山で暮らす子供たちが、国を揺るがす秘密に入り込んでゆく冒険ミステリー。汚職、横領、賄賂といった社会腐敗の描写にリ
アリティがあるのも、著者のアンディ・ムリガンが
英語教師として
フィリピンに滞在していたことが寄与しているのでしょう。
登場人物を語り手にして代わる代わる語らせるストーリー進行は、物語に新鮮な印象を与え、キャラクターに対する親近感を抱かせます。特に子供たちの語り口は可愛らしく、読むだけで臭ってきそうな汚く臭いはずの舞台設定も、どこかファンタジックなものに感じさせます。また、日常的に死と接している子供たちの鋭敏な警戒感は物語に緊張感を与えて、後半のスリリングな展開の中で描かれる登場人物の想いに心を揺さぶられます。
嘘をつき大人を出し抜く子供たちですが、愛おしくピュアな存在として描かれており、それに相応しい痛快で爽快なエンディングが待っていました。
2005年にイギリスで出版され、16ヶ国に翻訳されてるこの本。
あまりにも面白くて傑作で、この本を読んだ後1週間他の本が読めませんでした。
主人公ラムがクイズ番組「十億は誰の手に?」出演で13全問正解したのが、本当に彼の人生から学んだことなのか。
クイズ出題順にラムの人生が交互して、インド社会が抱える宗教対立、経済格差、性的虐待、売春など、子供のラムがどう乗り越えてきたのか語られる。
浮かび上がるインドが抱える問題に、ラムが乗り越えてきた苦労。
ラムだけが苦労してる訳でもなく。
ラムだけが幸運な訳でもない。
自分の人生をラムがどう生きてきたのか。そのラムの姿勢が、読者を熱くさせる。
タイトルにもある1ルピーも、ラストで最高の小道具になる。