まず私のレビューは1993年版に基づくものですが、頁数が同じことから極端な増補改訂は行われていないと判断して1993年版の内容に従ってレビューを続けさせて頂ます。
本書には謎も多く主題のAgassiz(アガシーと発音するそうです)は花の名では無く
カナダの町の名で、
カナダ海軍が運用したフラワー級コルヴェットは同じ命名要領だったそうです。フラワー級コルヴェットは英国で145隻、
カナダで121隻が製造され(他に降伏時未完で後に
ドイツ海軍に接収された
フランス製4隻)てAgassizは
カナダ製の艦で英国製のものとは細部が異なるのに何故
カナダ艦を選定しのか説明はありません。(可能性として
カナダ海軍が対Uボート戦である大西洋の戦いでの貢献に光を当てたかったのかもしれません)
いつもの様に本書の構成を紹介します。
・本文(今回は捕鯨船をモデルにフラワー級コルヴェットが開発された経緯やその後の発展に比較的多くの頁を使い、更にAgassizの経歴、船体、機関、武装、アスディックやレーダーの装備状況等紹介しています)12頁
・白黒写真集(他のシリーズと異なり主題のAgassiz以外の艦の写真が多いです) 14頁
・細部線図集(船体や内部配置図、船型図や横断面毎、甲板レヴェル毎の配置図、装備の線図など非常に豊富で本書の核心になる部分です) 126頁
線図集で、フラワー級コルヴェットの装備した掃海具には不明点が多く多分に筆者の推定であることを注意しています。
またAgassizは短船首楼型であり、有名な1/72のレヴェ−ル(旧マッチボックス)のキットは船首楼延長型で、その点で模型製作の参考資料としての使い勝手は今一つかもしれません。
しかし、ボイラー(後には水管式も装備されましたが)等、普通の軍艦とは異なる点も興味深く、何より
Cruiser "Bartolomeo Colleoni" (Anatomy of the Ship)の様に初版だけで本シリーズから姿を消す艦も多い中版を重ねるというのは英国人がこの艦を高く評価している証だと思います。