南山宏という人はオカルトやトンデモ本の著者であるかのようだが、読んでいると教養がある。逆に教養があってオカルトの扱う問題を真正面から中心に扱うので、信頼できる。
　本書はアトランティス伝説を、オーソドックスではあろうものの大西洋に沈んだ未確認の実在した島大陸として解明しようとしたものである。古地図コレクション、現代の地質学の成果から少しずつその未知の島大陸の実像を浮かび上がらせている。ただ、大西洋は太平洋と違い、地溝に沈み行くのではなく創成されてきた湧き出ずるプレートである。困難はまだまだなくなっていないものの庄子大亮『アトランティス・ミステリー』のように世界諸神話の洪水伝説と史実の関係すら認めない、ただただそんなものはない、という議論とはちょっと違う。
　本書から二十年が経った。著者が「統一理論」とまで云う超古代文明論の集大成がそろそろ読みたいものである。