わたしはこのところ古代史に関心があり、あまり小説というものを読むことはない。坂東真砂子氏のものは「山妣」「曼荼羅道」が印象的で、それ以外は掌編を読んだ程度だ。
しかし、この「朱鳥の陵」には一読して、なおも興奮醒めやらず、こうしてレビューを書いている。面白い! そして小説としての価値に止まらない、瞠目すべき書である。
古代史の本、とくにアカデミックな学者のものは、概ね鳥瞰的・客観的な視点からのものが多い。もちろん、それは必要な視点だが、こぼれ落ちているものもまた、多いはずだ。小説のかたちをとると、当事者の視点が中心となるため、思いもよらぬ見地が炙りだされるる可能性がある。
古代史を舞台にした小説としては黒岩重吾氏のものが先駆的だが、坂東氏の「朱鳥の陵」には夢を読み解く職能者を登場させるという果敢な試みにおいて出色だ。心理描写、人間描写の卓越さのみならず、古代において人々を支配していた想念――現代でも人々の心の底に眠っていると思われる?――を縦横無尽に駆使して圧巻。坂東氏の力量には心底、脱帽した。それでいて、歴史的事実を細部にわたりきちんと踏まえている。
普段、小説を読まない歴史愛好家にもお勧めしたい。
ただし、著者に要望したいことがあります。
本作の着想に大きな、それも出発点というべき?インスピレーションを与えたものとして民間の民俗学者・吉野裕子「持統天皇」があったと推察される。吉野氏の著作は、巻末に参考文献に見出されはするものの、他の文献のなかに埋もれるようにあるにすぎない。
もちろん、これを作品に仕立て上げた著者には感服するが、一方、故・吉野氏にたいし、もうすこし配慮があってもよかったと思われる。参考文献のなかでも特記するとか。
あるいは、作品の形態が小説だと、この程度で済ますのが常識なのだろうか…。
それでは吉野氏が可哀そうだ。
注文ついでに編集者へ:読み進めているうちに、なんか妙な感じだと気付き、よく見るとやや右肩上がりの斜字体になっていました。たしかに毛筆の場合、やや右肩上がりなるので、それに倣ったのかもしれません。工夫したのでしょうが、個人的な印象ながら、読みにくいと感じました。やはり活字は活字、独自の文化なのではないでしょうか。香気あふれる文体を損なっているように思いました。
【追記】古代史ファンでも古代天皇をめぐる人間関係、特に婚姻関係はこんがらかります。わたしは「天智と持統」(遠山美都男、
講談社現代新書)を傍らにおいて本書を読みました。ご参考まで。
ホラーというより、感動的なシーン(?)が多かったです。
栗山千明さんが演じていた女の子の役があまりに切なくて、胸が締め付けられました。主題歌もなかなか美しくて良い曲でした。個人的にはこの映画好きですね~。ちょっとBGMが怖いけど……。でも原作のほうが怖いですね。怖い上に、エロいし、しかもグロいし……読んでて実際気持ち悪くなったくらいなんで。怖い思いをしたいなら原作を読む、ちょっと感動も欲しいならDVDを見るのが宜しいかと思います。
「狗神」という
タイトルからしておどろおどろしくも神秘的で、大変興味をそそられました。この映画の評価は総じてあまり良くないようですが、私は好きです。大変素晴しい作品だと思っています。原作も含めストーリーも好みですし、特に役者さん方の演技が素晴しかったです。
天海祐希さんがあんなに妖艶な演技ができるとは思いませんでした。渡部篤郎さんもこの作品で好きになりました。
大変素晴しい作品です。