暴力団排除条例などというものが施行されている現代。暴力団員を主役にした小説は消えていない。それどころか、けっこう読ませる作品が増えているように思う。
白川道氏の『竜の道』、今野敏氏の『とせい』、伊集院静氏の『羊の目』、菊池幸見氏の『泳げ!唐獅子牡丹』などが、ここ数年読んだものでは、好きな小説だ。古くは小林信彦氏の『唐獅子株式会社』とか、小川竜生氏の『
ニューヨークの嵐・カリブの太陽』もいい。こういうジャンルはおそらく、女性は読まないだろうな、というものだ。
この浜田文人氏の『白石光義東へ、西へ』はたまたま手にしたものだけど、掘り出し物だったと言ったら失礼だが、けっこう読ませる、楽しめる作品だった。
古い任侠精神を全面に押し出す主人公の白石組長。弱い者いじめは絶対にしない。女に惚れっぽいのを隠さないところだけは、現代の極道であろう。いい味を出している。
自らを暴力団ではなく「極道」と言う。弱気を助け、強気をくじく生粋の浪速極道、と解説にあるが、そのキャッチフレーズ通りの痛快な物語が展開されていく。
いま思えば、高倉健さんが主演した東映ヤクザ映画を夢中で見ていたのは、こんな感じだったのだろう。だから今でも、その任侠精神を感じられる極道小説が好きなのかもしれない。
予定調和的な物語がイヤだとか、ヤクザが嫌いな人にはおすすめできないが、痛快なフィクションの世界を楽しみたい大人には最高のエンタテインメントだ。
読後すぐに、浜田文人氏の小説を数冊買った。明日の通勤時間が楽しみだ。