一作目からおおよそ一ヶ月後が舞台となるシリーズの二作目.文庫書き下ろし作品です.
会話中心で進められ,関係者の事情を語り,おおよそ悪くない結末で締める話運びは,
あえてジャンル分けをするなら,ホワイダニット系のミステリになるのかもしれません.
ただ,代言人である主人公が助手に推理を促したり,真相や犯人捜しの要素はあるものの,
そこに潜む人々や思いから,事件以上のものまでを解決へ導く話運びが強調をされています.
ただ,本作では前・後半で別々の事件があるのですが,前半の終わり方がどうも唐突で,
そのため,後半もしばらくは乗り切れず,結果,どちらも浮いてしまったように感じます.
サブ
タイトルを飾る事件もその後半のみ,しかも前半との繋がりは全くというほど見られず,
かろうじてあった部分にしても,正直なところ,あってもなくても…というのは否めなません.
何度かあったオカルトなやり取りも評価が分かれそうで,その割に物語への影響も少なく,
これから先への伏線になるのかも知れませんが,今ひとつ中途半端で物足りなさが残ります.
舞台となる時代の文化や景色を織り交ぜ,急速に進みつつある近代化の明暗は印象的ですし,
助手となる青年の奮闘や周りの人物たちなど,読みやすい作品であるのは間違いないのですが,
本作については,大小いくつかの事件が流れを分断,物語が散漫になってしまったのが残念です.