四季・知床半島 ~ヒグマ親子の物語~ [DVD] |
“カムイ”と名付けたヒグマの子どもとその母熊を、長期間に渡って追いつづけたドキュメンタリー。ヒグマの子どもは、二匹に一匹の割合で死んでしまう。子グマがいずれ独り立ちできるように、生きる知恵を身をもって教える母熊。しかしある時は厳しく突き放し、数週間も置き去りにしたりする。そんな中でカムイは、自分で獲物を獲ることを覚え、たくましく成長していく。
知床の冬は厳しく、一年の半分を占める。その中で、他の動物たちも懸命な営みを続けている。川で産卵した直後、力尽きてそのまま死んでいく鮭の群れ。それがそのまま、熊たちの貴重な栄養源となる。また、海底で卵を数ヶ月抱きつづけ、孵化していく稚魚たちの姿を見届けて、力尽きてひっそりと死んでいく雄の深海魚。 どの動物もいとしく、感動的でさえある物語を、淡々と語り継いでいる。その押しつけがましくない語り口に好感が持てる。日本にもまだ残されている手つかずの大自然と、その中で生きる動物たちに、畏敬の念を覚える。 |
羆撃ち |
文章は読みやすい。著者は都市部出身ながら大学卒業後プロハンターとなる。小学校前から日曜ハンターの父と山を歩き、大学在学中から単独猟で羆や鹿をしとめる。天候を読みつつ痕跡を追い、冬山でビバークする。獲物と対峙し、しとめた獲物は解体して何度も運ぶ。各場面の何気ない細部描写により、聞き書きでは不可能な臨場感が生まれている。
研ぎ澄まされた五感で感じる自然の描写や、相棒のアイヌ犬との強い絆、武者修行に訪れたアメリカのハンタースクールでの逸話も印象的。 動物を殺して解体する描写に抵抗を感じる人がいるかもしれないが、本書には「頂いた命を無駄にしない」という思いが素直に表れている。屠殺解体を代行してもらった肉ばかり食べている人は一度その大変さを体験してみてほしい。 |
羆嵐 (新潮文庫) |
100年ほど前に北海道で現実に起こった残酷なヒグマの事件の小説、筆者の同時代の北海道を扱った小説に「赤い人」があるが、いずれも現代の平和で安全な北海道では想像もできないような世界の話で、非常に興味深く読むことができた。人間(特に女性)の味を覚えた人食いヒグマが人間を襲い、対応が後手後手に回り苦悩する行政区長に同情する。実際にああいった状況に遭遇した場合適切な対応が取れるのかどうか、警察やハンターを総動員して駆除に乗り出すが効果なく、結局は人格的に問題のある孤独な熊打ちが人食い熊を仕留めて、仕事が終わると姿を消すといった存在はカッコ良く、まるで必殺仕事人のようなドラマ性がある。マグロよりもこちらの方がドラマ化をしたら面白いのではないかと思う。 |